コラム

オーストラリアが米英から原子力潜水艦導入へ AUKUSで中国の海洋進出を封じ込め

2021年09月16日(木)10時59分
原子力潜水艦

オーストラリアも原子力潜水艦を保有することに shaunl-iStock.

[ロンドン発]アメリカ、イギリス、オーストラリアが15日、新たな安全保障パートナーシップ「AUKUS」を締結した。平和やルールに基づく国際秩序を支援するのが狙いで、手始めに3カ国が協力してオーストラリア海軍の原子力潜水艦導入を進める。志を同じくするアングロサクソン海洋民主主義国家の同盟関係を強化し、中国の横暴を抑えるためインド太平洋地域での連携を強化する。

同じく海洋民主主義国家の安倍晋三前首相が提唱した「自由で開かれたインド太平洋」構想に基づき、日米豪印4カ国(クアッド)の関係も強化されてきた。ジョー・バイデン米大統領は今月24日、米ワシントンのホワイトハウスで対面形式による初のクアッド首脳会談を開く。AUKUSとクアッドをシンクロさせれば、中国に対する強力な抑止力となる。インド太平洋で共通した利害を持つ有志の海洋民主主義国家は対中スクラムを組む必要がある。

バイデン大統領とボリス・ジョンソン英首相、オーストラリアのスコット・モリソン首相は「われわれの永続的な理想とルールに基づく国際秩序への共通のコミットメントとして、インド太平洋地域における外交、安全保障、国防協力を強化することを決意する」と宣言した。 情報と技術を共有するため、安全保障・国防関連の科学技術、産業基盤、サプライチェーンの統合を深める。

ファイブアイズの信頼が裏打ち

オーストラリアの原子力潜水艦開発は相互運用性、共通性、相互利益に重点を置いた3国間の共同作業だ。最初の18カ月間で目標を絞り込む。オーストラリアは核物質と核技術の不拡散、安全、セキュリティーを確保するため、核物質が核兵器に転用されないことを担保する保障措置、透明性、検証、説明責任に関する最高水準の措置を順守する。オーストラリアは国際原子力機関(IAEA)を含め非核兵器国としてすべての義務を果たす。

AUKUSはアングロサクソン5カ国の電子スパイ同盟「ファイブアイズ」を通じて広範な情報を共有してきた3カ国間の信頼と協力関係に裏打ちされている。

オーストラリアには原子力産業がないため原子力潜水艦の導入には政治的・技術的な課題があり、2016年、現在のコリンズ級潜水艦6隻に代わる次世代のアタック級潜水艦の設計・建造をフランス企業ネイバル・グループ(旧DCNS)に発注した。海上自衛隊のそうりゅう型が本命とされたが、土壇場で逆転された。当時のマルコム・ターンブル豪首相が、日米豪の安全保障トライアングルが強化されるのを警戒する中国に配慮したためともささやかれた。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ドイツ銀、プライベートバンクで新興国人員拡充 最大

ビジネス

台湾の2500億ドル対米投資、企業が「自発的に判断

ビジネス

業績発表後予想外の株価変動でもうかる米オプション取

ビジネス

トランプ氏、鉄鋼・アルミ関税の一部引き下げを計画=
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    50歳には「まったく見えない」...信じられないレベルの「若見え」な女性の写真にSNS震撼
  • 4
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 5
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 6
    あなたの隣に「軍事用ヒト型ロボット」が来る日
  • 7
    「ショックすぎる...」眉毛サロンで「衝撃的な大失敗…
  • 8
    【独自取材】「氷上のシルクロード」を目指す中国、…
  • 9
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 10
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 5
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 6
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 7
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 8
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 9
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 10
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story