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イギリスの危ない実験「感染ピークは6週間続き、1日1千~2千人の入院で医療が逼迫」、最悪11万5800人が死ぬ
スポーツイベントの規制が緩和されるやウインブルドンに戻ってきた人々(7月5日) Peter van den Berg-USA TODAY Sports
<「パンデミックは世界中で猛烈に進行している。いくらワクチン接種が進んだとはいえ、大規模緩和や自由について話すのは時期尚早だ」>
[ロンドン発]英政府が7月19日からコロナの法的規制をほぼ全面解除する前提となった予測モデルについて、非常時科学諮問委員会(SAGE)パンデミック・モデリング・グループ議長のグレアム・メドレー・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院(LSHTM)教授が13日、英BBC放送のラジオ番組で「1日の入院患者が2千人を超えることはないものの、ピークは6週間続き、医療が逼迫する恐れがある」と証言した。
最も起こりうるモデルで入院患者のピークは1日1千~2千人、死者は100~200人と予測。それが6週間続くと単純計算で入院患者は計4万2千~8万4千人、死者は4200~8400人にのぼる。東京五輪・パラリンピックが迫る日本では「イギリスを見習え」という声も聞かれるが、死者がまだ1万4959人に過ぎない日本ではとても受け入れられないシナリオだ。
ワクチンを2回接種済みの人も今の第3波にのみ込まれ、「死者の約半数を占める」ことをメドレー教授は認めた。その一方で「ワクチンを接種していなければ今ごろ1日に300人、400人、500人の死者が出ていたはず。死者が約100分の1で済んでいるのはワクチンのおかげ。入院患者が1日に5千人に達するような状況はよほど悪いことが重ならない限り、起こらない」と断言した。
メドレー教授によると、インペリアル・カレッジ・ロンドン、LSHTM、ウォーリック大学が3つの異なるモデルを使って予測した結果、そのものズバリの数字は出せなかったものの、最悪期の今年1月より多い感染者を出す一方で、ワクチン接種の効果で入院患者や死者は少なくなるとの見方で一致した。
悲観シナリオなら来年6月までの死者総数11万5800人
その中からインペリアル・カレッジ・ロンドンの予測モデルを見てみよう。
ワクチン2回接種の効果が「強い」「普通」「弱い」の3シナリオと、7月19日に社会的距離など非医薬品介入を解除した後、感染者から新たに何人に感染するかを示す再生産数(R)を「高(平均で7)」「中(同5.5)」「低(同4.5)」「9月1日までゆっくりと5.5に上昇する」と想定した場合の4シナリオを組み合わせて検討している。
米ファイザー製と英アストラゼネカ製のワクチンを2回接種した場合、「高い」「普通」「弱い」のいずれのシナリオもデルタ(インド変異)株による死亡を防ぐ有効性は95~98%、重症化を防ぐ有効性も85~98%と高く設定されている。ワクチンの効果を「普通」とし、7月19日に解除した場合、予測モデルは次のようになる。
オレンジ色の欄がおそらくインペリアルのチームが想定するメインシナリオだろう。7月19日に解除した場合、ワクチン効果を「強い」「普通」「弱い」の3シナリオに分けて予測したのが下のグラフである。
インペリアルのモデルでは、7月19日に解除しても4週間遅らせて8月16日に解除してもそれほど大きな違いはない。しかし楽観シナリオで死者総数9400人、入院患者総数7万7500人、悲観シナリオで死者総数11万5800人、入院患者総数82万700人と大きな開きが出る。