コラム

G7の英コーンウォールで2450%増の感染爆発 人流増でデルタ株拡大 東京五輪は本当に安全か

2021年06月22日(火)19時41分
G7でSPを引き連れて歩くバイデン米大統領

英コーンフォールでのG7の間、SPを引き連れて歩くバイデン米大統領。小さな町に6500人の警官が配備された(6月13日) Doug Mills/REUTERS

[ロンドン発]先進7カ国首脳会議(G7サミット)が6月11~13日に開かれ、G7、欧州連合(EU)、韓国、オーストラリア、南アフリカの首脳、政府代表をはじめ、世界中のメディア、警備に当たる警察官6500人が結集した英南西部コーンウォールで新型コロナウイルスの新規感染者が激増している。ほとんどがデルタ(インド変異)株とみられている。

7月23日に開幕する東京五輪・パラリンピックは海外からの観光客はシャットアウトして行われるものの、世界中から選手や関係者ら10万人近くが来日する。すでにウガンダ代表選手団9人のうち1人の陽性が判明しており、五輪・パラ開催によって再生産数(R)が最大で7とされるデルタ株が蔓延することが懸念される。

地元メディアのコーンウォール・ライブによると、6月13日までの1週間の新規感染者はG7会場のセント・アイヴス&ハルスタウンで人口10万人に換算すると733.2(その前の1週間に比べて2450%増)、タウェッドナック、ルラント&カービス・ベイが同294.9(800%増)。国際メディアセンターが設置されたファルマス・イーストが同600(2000%増)。

コーンウォール&シリー諸島全体では同81.7(815.7%増)、イギリス全体の平均では同77.4(33.3%増)となった。

英政府が公開している新規感染者マップで確認すると(1)セント・アイヴス&ハルスタウン(2)タウェッドナック、ルラント&カービス・ベイ(3)ファルマス・イーストファルマス・ノース――の1週間ごとの新規感染者の小計は下の表のようになる。( )内は人口10万人に換算した時の指標だ。

kumura20210622172701.png

G7会場の1週間の新規感染者数をグラフで表すと感染の広がりは6月15日ですでにピークアウトしていることがうかがえる。

kumura20210622172702.jpg

新規感染者マップを時系列で見ても6月2日時点では感染がほとんど広がっていなかったのに、9日、16日と大量の警察官が警備に当たったG7サミット会場周辺だけでなく、国際メディアセンターが設けられたファルマス・イーストでもG7を境に感染が急激に広がったことが一目瞭然だ。

時系列で見た新規感染者マップ

〈6月2日までの1週間〉3人未満は白くなっている。

kumura20210622172703.png

〈6月9日までの1週間〉G7会場となったセント・アイヴス&ハルスタウン、タウェッドナック、ルラント&カービス・ベイ、国際メディアセンターが設置されたファルマス、そして警備のためチェックポイントが設けられたニューキーで感染が広がり始める。

kumura20210622172704.png

〈6月16日までの1週間〉ボリス・ジョンソン英首相にゲスト国として招かれていたインドはデルタ株が流行しているため、オンラインでの参加となった。新規感染者マップを見ると、カービス・ベイ、ファルマス、ニューキーでクラスターが発生していることが分かる。いずれもイギリスの中でも最悪と言える感染状況(紫色)だ。

kumura20210622172705.png

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国軍が台湾周辺で実弾射撃訓練、封鎖想定 過去最大

ワールド

韓国大統領、1月4ー7日に訪中 習主席とサプライチ

ビジネス

米シティ、ロシア部門売却を取締役会が承認 損失12

ワールド

マレーシア野党連合、ヤシン元首相がトップ辞任へ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 5
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 6
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 7
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 8
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 9
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それ…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 7
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 10
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story