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英変異株の感染力を50%上回るインド変異株の脅威 英の正常化に遅れも ワクチン遅い東京五輪に赤信号
コロナ犠牲者を悼むためテムズ川沿いのセント・トーマス病院の壁に描かれたハート(筆者撮影)
[ロンドン発]大規模なワクチン展開で1日当たりの新たな死者が一桁に落ちたイギリスのボリス・ジョンソン首相は14日、インドで発見された感染力が非常に強いインド変異株(B.1.617.2)が英イングランド北部ボルトン、北西部ダーウェン、ブラックバーンで拡大しているとして正常化のロードマップを遅らせる可能性に言及した。
インド変異株がワクチンの効果を弱める証拠がないため、ジョンソン首相は英予防接種合同委員会の助言に従い50歳以上への2回目の接種を加速し、インド変異株の感染が広がる地域では2度の接種期間を12週間から8週間に短縮する方針を打ち出した。17日からロードマップのステップ3として飲食店の屋内営業や大型イベントを再開するものの、来月21日の正常化には黄信号が灯る。
英内閣府ブリーフィングルームA(COBRA)で行われる緊急事態対策委員会に科学的助言を行う緊急時科学的助言グループ(SAGE)は今月13日に開催された会合の詳報を翌14日、異例のスピードで公開した。バース大学のキット・イエーツ上級講師(数理生物学者)は「科学者は正常化の日程について私たちに何かを伝えようとしている」とツイートした。
ワクチン予防効果を弱める恐れ
SAGEは「特に懸念されるインド変異株の感染拡大はB.1.1.7(英変異株)より速いのは間違いない。インド変異株の感染者は1週間以内に倍に増えており、英変異株より最大50%も感染力が強いとみるのが現実的だ。インド変異株の感染が広がっている地域で、感染防止対策を緩和すれば感染はさらに急激に広がるだろう」と指摘する。
インド変異株の感染力が英変異株より40~50%強いと想定したSAGEのモデルでは、ステップ3の屋内営業再開だけでもこれまでのピークを上回る入院患者が発生する。ステップ4として6月に正常化に踏み切れば、さらに入院患者は膨れ上がる。インド変異株は、ワクチンの効き目がある英変異株とワクチンの効果を弱める南アフリカ変異株の間に位置する。
このためインド変異株は重症化や死亡リスクよりもワクチンの感染予防効果を弱める恐れがあるとSAGEは分析する。インド変異株が流行している地域の入院患者数はまだ増えていないことを理由に、ジョンソン首相はワクチン展開の加速と週2回の自己検査による変異株のあぶり出し、隔離の徹底でステップ3に進む判断を下したが、SAGEは否定的だ。
インド変異株の感染力は脅威である。コロナウイルスのゲノム解析を行う英ウエルカム・サンガー研究所のデータを見ると、英変異株が昨年11月以降、急激に拡大。今年3月には100%近い勢力を占めるようになった。インド変異株の勢力は現在まだ6.1%だが、英変異株より50%も感染力が強いとなると2~3カ月で100%近い支配勢力になるだろう。