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英国がEUを離脱する確率は、トランプ氏が米大統領選の指名候補になるぐらいある?
1991年から2014年にかけ、英国にやって来た移民はネットで397万9千人(オックスフォード大学などの調査)。首相キャメロンはずっと年間の移民流入を2020年までに純増で10万人以下に抑えると言い続けているが、実際は3倍以上の33万6千人に達している。移民と外資が英国経済の原動力とは言え、競争が激化し、社会保障費が出稼ぎ移民に使われることに庶民の反発が強まる。
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EU大統領トゥスクの回答をみると、キャメロンが求めていた「英国に来て4年間、移民は所得保障(タックスクレジット)などの社会保障を受けられない」という制限案については、「財政が逼迫した場合にのみ、段階的に社会保障を受けられるようにする緊急避難措置を認める」と大幅に弱められていた。英国でなく母国で暮らす子供の育児手当の廃止案については「英国の給付額ではなく、出身国の給付額に合わせる」という回答だった。
難民危機が盛んに報道されるようになった昨年秋以降、世論調査でEU離脱派が残留派を上回ることが増えた。130人が死亡したパリ同時多発テロや中東・北アフリカ情勢の悪化が英国の国民感情をさらに内向きにする。EUとの再交渉が上手く行けば残留という意見が圧倒的に多いことを受け、キャメロンは「大きな前進だ」と交渉成果を自画自賛し、これからは正々堂々とEU残留キャンペーンを展開する構えだ。
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それに対する欧州懐疑派は閣内だけでも、年金・雇用相ダンカン・スミス、下院院内総務グレイリング、北アイルランド相ビリアーズ、教育相モーガン、外相ハモンド、エネルギー相ラッド、環境相トラス、運輸相マクロクリン。このほかロンドン市長のジョンソン、元国防相フォックスとそうそうたるメンバーが名前を連ねている。
EU拡大によって大量の移民が英国に流れ込み、仕事や社会保障費を奪われたと感じる単純労働者と高齢者の怒りが世論の二極化を極端に進めている。英国がEUを離脱する確率はと問われれば、トランプが米共和党の指名候補になるぐらいあるんじゃないだろうか。