コラム

韓国、新型肺炎の集団感染を起こした新興宗教「新天地イエス教会」の正体

2020年02月25日(火)13時29分

聖書を教える「センター」で行われる7カ月間の勉強会に参加し、過程を修了した人が、試験(叙述式問題100問)を受け、合格すると正式に「新天地」の信者になり、布教活動に参加することになる。「新天地」の教理の完成度はそれほど高くないと言われているが、7カ月にわたる集中的な布教活動と勉強会により、自分も知らないうちに「新天地」の教理に少しずつ洗脳されてしまうそうだ。

さらに、「新天地」により普通の教会が丸ごと乗っ取られるケースも頻繁に発生している。乗っ取られた教会は「新天地」の教会として使われるか、教会の土地や建物を売却し資金源として使われる。あるいは、既成教会の登録を残したまま「偽装教会」として利用するケースもある。

キリスト教の教えである「愛」を考えるべき時

新型コロナウイルスの感染者急増により「新天地」のような新興宗教団体が韓国社会から警戒の対象になっている。新興宗教団体の信者数は韓国国内だけで200万人に達すると言われている。韓国で2015年時点に宗教を持つ人口は約2,155万人で全人口の43.9%を占めており、プロテスタント人口が968万人、カトリック人口が389万人であることを考慮すると新興宗教団体の信者数がかなり多いことがうかがえる。彼らの場合、自分が新興宗教団体の信者であることを隠しているため、今回の新型コロナウイルスのような非常事態が発生した際に、防疫当局が信者たちの所在地を把握することが難しく、対策に予想以上の時間がかかってしまう。

「新天地」は2月23日、ホームページなどで「新型コロナウイルスは、中国で始まり、韓国に移った病気だ。われわれは、最大の被害者であることを認識してほしい」とした上で「保健当局に最大限協力していく」という姿勢を表明した。しかしながら、防疫当局は、いまだに新天地大邱教会の信者を把握するのに大変な困難を強いられている。信者の所在が把握できず、対策が遅れた場合、国家的災難につながる恐れが高い。キリスト教の基本理念は愛なのに、組織や自分優先の行動は望ましくない。

プロフィール

金 明中

1970年韓国仁川生まれ。慶應義塾大学大学院経済学研究科前期・後期博士課程修了(博士、商学)。独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年からニッセイ基礎研究所。日本女子大学現代女性キャリア研究所客員研究員、日本女子大学人間社会学部・大学院人間社会研究科非常勤講師を兼任。専門分野は労働経済学、社会保障論、日・韓社会政策比較分析。近著に『韓国における社会政策のあり方』(旬報社)がある

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ユーロ圏小売売上高、9月は前月比0.1%減 予想外

ビジネス

日産、通期純損益予想を再び見送り 4━9月期は22

ビジネス

ドイツ金融監督庁、JPモルガンに過去最大の罰金 5

ビジネス

英建設業PMI、10月は44.1 5年超ぶり低水準
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイロットが撮影した「幻想的な光景」がSNSで話題に
  • 4
    「これは困るよ...」結婚式当日にフォトグラファーの…
  • 5
    NY市長に「社会主義」候補当選、マムダニ・ショック…
  • 6
    「なんだコイツ!」網戸の工事中に「まさかの巨大生…
  • 7
    カナダ、インドからの留学申請74%を却下...大幅上昇…
  • 8
    もはや大卒に何の意味が? 借金して大学を出ても「商…
  • 9
    約500年続く和菓子屋の虎屋がハーバード大でも注目..…
  • 10
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 9
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story