イスラエル首相らに逮捕状、ICC ガザで戦争犯罪容疑
国際刑事裁判所(ICC)は、イスラエルのネタニヤフ首相とガラント前国防相、およびイスラム組織ハマス幹部のムハンマド・デイフ氏に対し、戦争犯罪と人道に対する罪の容疑で逮捕状を発行した。ミツペラモン近郊の軍基地で10月撮影(2024年 ロイター/Amir Cohen)
[ハーグ/アムステルダム/エルサレム 21日 ロイター] - 国際刑事裁判所(ICC)は21日、イスラエルのネタニヤフ首相とガラント前国防相に対し、戦争犯罪と人道に対する罪の容疑で逮捕状を発行したと発表した。
ICC判事らは、ネタニヤフ首相とガラント氏が「パレスチナ地区ガザの民間人に対する広範かつ組織的な攻撃」において、殺人や迫害、戦争の武器として飢餓を利用するという行為について刑事責任を負っていると信じるに足る十分な根拠があると述べた。
さらに、ガザの封鎖と食料や水、電気、燃料、医薬品の不足が、民間人に打撃を与えることを意図する生活状況を作り出したと見なす十分な根拠もあるとした。
ICCのカーン主任検察官は、ICCの設立条約である「ローマ規程」を締約する加盟国に対し、ICCの命令を尊重するよう要請したほか、ローマ規程を締約していない国にも協力を呼びかけた。
イスラエル首相府は声明を発表し、ICCの決定を「反ユダヤ的」と非難。「イスラエルはICCが同国に対して行った不条理かつ虚偽の行為を嫌悪感を持って拒否する」とし、ネタニヤフ首相はイスラエル国民を守るために「圧力に屈することはない」と言明した。
イスラエルは、パレスチナ自治区ガザにおける戦争犯罪を否定し、これに関するICCの管轄権を認めていないが、ICCは、イスラエルが管轄権を受け入れる必要はないとした。
<ハマス幹部にも逮捕状>
ICCはまた、イスラム組織ハマス幹部イブラヒム・アルマスリ氏に対しても、戦争犯罪と人道に対する罪の容疑で逮捕状を発行。ガザ紛争の引き金となった23年10月7日のイスラエル奇襲における大量殺人、性的暴行、人質拘束の容疑も含まれる。同氏はムハンマド・デイフという名前でも知られる。
同氏については、イスラエルは7月の空爆で殺害したとしているが、ハマスは否定も肯定もしていない。検察はマスリ氏死亡の可能性について引き続き情報収集を行うもよう。
ハマスは声明で、ネタニヤフ、ガラント両氏に対する逮捕状を歓迎した上で、責任追及をイスラエルの指導者全員に拡大するようICCに求めた
ハマス幹部はロイターに対し、イスラエル人に対する逮捕状は被害者に正義をもたらす重要な一歩としつつも、全ての国が実質的に支持しなければ、限定的な一歩にとどまるという見方を示した。
<国内外の反応>
イスラエルでは、ネタニヤフ首相に批判的な政治家もICCの決定に反発。ベネット元首相はXへの投稿で「イスラエル指導者らに対する恥辱ではなく、ICCおよびその加盟国に対する恥辱だ」と主張。6月に戦時内閣から離脱したガンツ前国防相も、ICCの「道徳観の欠如」と呼び、「決して忘れられることのない歴史的規模の恥ずべき汚点」と非難した。
米ホワイトハウス国家安全保障会議(NSC)の報道官は、ICCの決定を「根本的に拒絶する」と表明した。
欧州連合(EU)の外相に当たるボレル外交安全保障上級代表は、ICCの決定は政治的なものではないと強調。尊重され、実行される必要があるとし、「ガザでの悲劇を止めなければならない」と述べた。
ICCの逮捕状は、EU全加盟国を含む全てのローマ規程締結国で拘束力を持つとも強調した。
カナダのトルドー首相は、ICCの全ての判断に従うと表明。英首相報道官は、英国はICCの独立性を尊重すると述べた。
オランダのフェルトカンプ外相は、国内において逮捕状に基づき行動するという認識を示した上で、「必須でない」接触は行わないとした。
トランプ次期米大統領の側近である共和党のグラム上院議員は、「ICCは危険な冗談だ。今こそ米上院が行動し、この無責任な機関に制裁を与える時だ」と述べた。