ニュース速報

ワールド

アングル:中台どちらにつくか、ソロモン諸島で政府と州が対立

2021年12月04日(土)08時14分

 南太平洋の島しょ国、ソロモン諸島における反政府抗議行動が暴動に転じ、4人の犠牲者が出た。これに先立ち、最も人口の多いマライタ州では、ソガバレ首相の率いる現政権が2019年に台湾と断交して中国を公式に承認したことに対する住民の抗議行動があった。この決定で、ソロモン諸島は大国間の地政学的な対立に巻き込まれてしまったのだ。写真はソロモン諸島のホニアラで数日間にわたる騒動の後、破壊された建物。11月27日撮影の動画より(2021年 ロイター/Jone Tuiipelehaki/via REUTERS)

[シドニー 29日 ロイター] - 南太平洋の島しょ国、ソロモン諸島における反政府抗議行動が暴動に転じ、4人の犠牲者が出たことを受けて、オーストラリアは治安維持を支援するため警察・兵士を派遣するに至った。

前週、3日にわたって続いた暴動では、抗議参加者による建物への放火や店舗での略奪が見られた。目撃者は、抗議者の怒りの矛先は高失業率や住宅難といった問題に向けられていたと話している。

だがこの暴動に先立ち、ソロモン諸島で最も人口の多いマライタ州では、ソガバレ首相の率いる現政権が2019年に台湾と断交して中国を公式に承認したことに対する住民の抗議行動があった。

中国との外交関係樹立という決定は、マライタ州とソロモン諸島政府との緊張を招くだけでは終わらなかった。人口65万人のソロモン諸島は、大国間の地政学的な対立に巻き込まれてしまったのだ。

<暴動で何が起きたか>

暴動が始まる前に、「マライタに民主主義を(Malaita for Democracy)」と称するグループの抗議参加者はソロモン諸島の首都であるガダルカナル州ホニアラに移動し、国会議事堂周辺に集結していた。彼らはソガバレ首相に対し、11月24日に対話に応じるよう求めていた。

目撃者の証言では、ソガバレ首相が姿を現さなかったことが暴動を引き起こしたとされている。ホニアラの中華街地区の大半はその後の暴動で破壊された。上水道の整備されていないホニアラ郊外の集落の若者らも、暴動に参加していたという。

ソロモン諸島政府からの要請に応えて、豪州は警察官・兵士100人を派遣。パプアニューギニアからも平和維持要員50人が送られた。派遣された要員は現地警察による治安回復を支援しており、フィジーも50人を派兵すると表明している。

ソガバレ首相は、ソロモン諸島と中国との外交関係樹立を望まない「諸外国の勢力」の介入があったと述べたが、国名は挙げなかった。台湾は、暴動への関与を一切否定している。

<中台の対立による影響は>

中国と台湾はここ数十年、南太平洋を巡るライバル関係にある。この地域の島しょ国の中には、一方から他方へと関係を乗り換える動きもあり、中台双方が影響力を高めるために援助やインフラの提供を競い合っているという指摘も表面化している。

台湾と公式の外交関係を維持している国は15カ国。台湾と断交し、中国に乗り換えた最も最近の2例が、2019年9月のソロモン諸島とキリバスだ。

だがマライタ州のダニエル・スイダニ州首相は、州内から中国企業を追放し、米国からの開発援助を受け入れた。

スイダニ州首相は5月に治療を受けるために台北を訪問し、ソロモン諸島の中央政府および駐ホニアラ中国大使館から抗議を受ける事態となった。

担当医師らは、スイダニ州首相には脳腫瘍の疑いがあり、外国の病院での治療を推奨していたと話している。州首相の帰国は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の関連で数回にわたり延期されたが、10月にはマライタに戻っている。

<中国・台湾の言い分は>

台湾は、暴動にはまったく関与していないと述べている。一方、中国外務省はソロモン諸島での事態を憂慮していると述べ、両国の関係を損なおうとする試みは「無益だ」としている。

中国外務省の広報官は「我が国とソロモン諸島の外交関係の樹立が、ソロモン諸島の根本的かつ長期的な発展に沿ったものであることは、諸事実が証明している」と語った。

<他の太平洋島しょ国は>

南太平洋地域の主要な地域グループである太平洋諸島フォーラムのヘンリー・プナ事務総長は、「すべての当事者」に自制を促し、法の支配と憲法を遵守することを求める声明を発した。

<米国の言い分は>

米国務省はホニアラにおける暴力行為に懸念を表明し、平和と安全の迅速な回復を支持すると表明した。その上で、ソロモン諸島との間に「しっかりとした絆」を維持しているとも述べている。

米国際開発庁(USAID)は2020年、持続可能な林業プロジェクトと平和維持部隊の再建を手始めとして、マライタ州を拠点とする開発プログラムに2500万ドル(約28億5400万円)を供与した。

これに対しソロモン諸島政府は同年10月、米国による援助プログラムはまず中央政府の承認を得る必要があるとして、マライタ州に適正な手続きを尊重するよう警告。「外国からの援助の政治利用」を止めるよう国民に訴えた。

スイダニ州首相の政策顧問は、米国からの援助は、ソロモン諸島政府から支援を要請した書簡に応じたものであり、2019年に中国承認へと舵を切る前の話であると話している。

<豪州はなぜ部隊を派遣したのか>

豪州は、ソガベレ首相が両国間の安全保障条約に基きホニアラの治安回復のために警察部隊の派遣を要請したことに応じたものだと説明。「私たちの関心は安定の維持にあり、対立するどちらか一方にくみすることはない」と主張している。

他方でマライタ州は、豪州の決定は意外だと述べている。

これまでにも豪州の警察部隊は、太平洋諸島フォーラムの決議で承認された平和維持活動として、2003年にソロモン諸島に派遣され、10年間駐留を続けたことがある。

1998年から2003年にかけてはガダルカナル、マライタ両州の武装グループが絡む深刻な国内暴動、武力紛争が続いていた。

一方、豪州と中国の外交関係には緊張が漂っている。豪国防相は中国が、地域の平和と繁栄を促進するという建前と裏腹に「警戒すべき」行動をとっていると批判しており、中国政府からの非難を受けている。

(翻訳:エァクレーレン)

ロイター
Copyright (C) 2021 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ホルムズ海峡通過船舶、停戦後も事実上停滞 追跡デー

ワールド

イスラエルのレバノン攻撃は停戦合意違反、交渉無意味

ビジネス

金融庁、プライベートクレジット問題で実態把握 大手

ビジネス

インタビュー:中東情勢収束のめど立たず、今期業績予
MAGAZINE
特集:トランプの大誤算
特集:トランプの大誤算
2026年4月14日号(4/ 7発売)

国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 2
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで代用した少女たちから10年、アジア初の普遍的支援へ
  • 3
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライナ軍司令官 ロシア軍「⁠春の​攻勢」は継続
  • 4
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 5
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 6
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの…
  • 7
    戸建てシフトで激変する住宅市場
  • 8
    高学力の男女で見ても、日本の男女の年収格差は世界…
  • 9
    キッチンスポンジ使用の思いがけない環境負荷...マイ…
  • 10
    「仕事ができる人」になる、ただ1つの条件...「頑張…
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 3
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで代用した少女たちから10年、アジア初の普遍的支援へ
  • 4
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始め…
  • 5
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 6
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐ…
  • 7
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 8
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 9
    米軍が兵器を太平洋から中東に大移動、対中抑止に空白
  • 10
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 6
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中