アングル:フランス長期金利が財政悪化懸念で上昇 ギリシャと同等に
11月28日、バルニエ内閣が崩壊の瀬戸際に立たされたフランスの長期金利を示す10年物国債利回りが上昇し、記録がある中で初めてギリシャと同等になった。写真はバルニエ首相。26日、パリの国民議会で撮影(2024年 ロイター/Stephanie Lecocq)
Harry Robertson
[ロンドン 28日 ロイター] - バルニエ内閣が崩壊の瀬戸際に立たされたフランスの長期金利を示す10年物国債利回りが上昇し、記録がある中で初めてギリシャと同等になった。これは金融機関がユーロ圏加盟国の信用度を見る目が劇的に変化したことを裏付けた。
総額600億ユーロ(630億ドル)の増税と歳出削減を盛り込んだフランスの2025年予算案に極右と左派の野党が反発し、バルニエ内閣の倒閣も辞さない構えを示している。債券投資家は、バルニエ内閣が崩壊した場合には財政赤字を減らす努力が水の泡になると懸念している。
オランダの金融大手INGのシニア欧州金利ストラテジスト、ミヒエル・タッカー氏は「不信任案が(議会で)可決されれば現在の予算案の進展がリセットされ、新たな政治的空白期間が始まるだろう」との見方を示した。
2012年に起きたユーロ圏債務危機の最中には、デフォルト(債務不履行)に陥るとみられていたギリシャの10年物国債利回りはフランスを37%ポイント超上回っていた。
それから12年半が経過し、28日のギリシャの10年物国債利回りは3%前後と、フランスの0.02%ポイント以内の水準で取引されている。
フランスの債務残高の増加は、債券市場での何年にもわたる優位性を徐々に失わせている。マクロン大統領が今年6月に国民議会(下院)の解散総選挙を発表し、左派連合が最大勢力となったことでハングパーラメント(宙づり議会)に陥った。
一方、12年のユーロ圏危機の震源地だった「PIGS(ポルトガル、イタリア、ギリシャ、スペイン)」と呼ばれた国々は債務残高を減らし、債券投資家にとっての魅力が増した。
ギリシャの公的債務残高は、ユーロ圏危機の前には国内総生産(GDP)の100%に達していた。20年に新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が発生すると200%超に上った。しかし、その後はGDPの160%程度まで低下し、エコノミストらは今後も下がり続けると予想している。
フランスの債務残高はGDPの112%と記録的な高水準にあり、さらに上昇している。フランスは新型コロナ禍と、ロシアが侵攻したウクライナでの戦闘に伴う打撃に対応して多額の支出をしたが、税収は予想よりも回復が遅れている。
英大手銀行バークレイズの金利ストラテジスト、マックス・キットソン氏は「たとえ政府が計画している財政再建を達成したとしても、フランスの財政赤字はかなり高止まりすることになる」とし、「ギリシャの債務残高の対GDP比は低下傾向にあり、フランスの債務残高の対GDP比が上昇傾向にあるのとは対照的だ」と指摘した。
アイルランドとポルトガル、スペインでは債務残高の縮小への取り組みと、欧州中央銀行(ECB)による何年にもわたる国債購入の効果で、国債利回りはフランスを下回っている。
フランスのプラス面は、国債利回りが絶対的には急上昇していないことだ。11月の初めと比べると16ベーシスポイント程度下げた。
大手格付け会社のフィッチ・レーティングスとムーディーズがフランスの格付け見通しを10月に引き下げたのに続き、S&Pグローバル・レーティングがフランスの格付け評価を更新する今月29日夜が試金石となるだろう。