ニュース速報

ビジネス

カナダ中銀、早期利上げ示唆 経済成長堅固で量的緩和終了へ

2021年10月28日(木)02時08分

FILE PHOTO: Bank of Canada Governor Tiff Macklem takes part in an event at the Bank of Canada in Ottawa, Canada, October 7, 2021. REUTERS/Blair Gable/File Photo

[オタワ 27日 ロイター] - カナダ銀行(中央銀行)は27日、政策金利である翌日物金利の誘導目標を予想通り0.25%に据え置いた。ただ、エネルギー価格の上昇と供給上のボトルネックにより、2022年の大半でインフレ率が目標値を上回る状態が続くと警告し、従来の予測より3カ月早く利上げを実施する可能性を示唆した。

また、国内の堅固な経済成長、新型コロナウイルスワクチンの高い接種率、雇用の堅調な伸びを理由に、債券買い入れプログラムを終了すると発表。四半期ごとの金融政策報告書で「カナダ経済は再び堅固な成長を遂げている」とし、現時点では経済のスラック(需給の緩み)は2022年半ばに解消される見込みとした。ただ、その時期に関しては経済再開に向けて様々な課題があるため「通常よりも不確実性が高い」とした。

マックレム総裁は「現在は、スラック(需給の緩み)が予想より早い時期に吸収されると考えている。このことは、これまでの予想よりも早い持期に利上げが検討されることを示唆している」とし、具体的には「(来年)4月から9月の間になる」と述べた。

カナダ中銀はこれまで、経済の完全な回復は22年下期と予想しており、それまでは政策金利を実効下限で維持するとしていた。

今年の経済成長率予想については7月発表時の6.0%から5.1%に引き下げた。成長鈍化とサプライチェーン(供給網)の混乱により国内総生産(GDP)ギャップが従来想定よりも縮小していることが示されたためという。

インフレ率については、1─3%のコントロールレンジを上回る状態が従来想定よりも長期化し、22年後半には鈍化して目標値に近づくと予想。インフレ率見通しを今年第4・四半期で4.8%、22年第4・四半期で2.1%とした。

また、21年および22年のインフレ率見通しをともに3.4%と、7月発表時の3.0%、2.4%からそれぞれ引き上げた。カナダ中銀は「今回の上方修正は、エネルギー価格の上昇に加え、供給上の制約による影響がより大きく、より持続することを反映した」と指摘。ただ、供給上のボトルネックは来年末までにはほぼ解消されるとした。

債券買い入れプログラムに関しては11月1日に終了し、満期を迎えるカナダ国債の再投資を開始すると発表。再投資における買い入れ総額の目標レンジは当初、月額40億─50億カナダドルとし、必要に応じて調整するとした。

BMOキャピタル・マーケッツのチーフエコノミスト、ダグ・ポーター氏は「現時点で超刺激的な金融政策の必要性はない」と指摘。「当社はカナダ中銀が来年7月に利上げを開始し、その後四半期ごとに0.25%ポイントの追加利上げを行うと予想している」とした。

TDセキュリティーズのカナダ担当チーフストラテジスト、アンドリュー・ケルビン氏は「ややタカ派方向のサプライズだった」と指摘。キャピタル・エコノミクスのカナダ担当シニアエコノミスト、スティーブン・ブラウン氏は「中銀が示した成長率見通しは、やや強気すぎるようにみえる」とし、「中銀は引き金を引くのを22年第3・四半期まで待つ可能性がある」との見方を示した。

金融市場が織り込む最初の利上げ時期は来年3月。カナダ中銀の今回の発表前は4月だった。

ロイター
Copyright (C) 2021 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウ大統領府長官の辞任、深刻な政治危機を反映=クレム

ワールド

トランプ氏、ベネズエラ大統領と電話会談 米での会談

ワールド

ネクスペリアに離脱の動きと非難、中国の親会社 供給

ビジネス

米国株式市場=5営業日続伸、感謝祭明けで薄商い イ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場の全貌を米企業が「宇宙から」明らかに
  • 4
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 5
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 6
    「攻めの一着すぎ?」 国歌パフォーマンスの「強めコ…
  • 7
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 8
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 9
    エプスタイン事件をどうしても隠蔽したいトランプを…
  • 10
    メーガン妃の「お尻」に手を伸ばすヘンリー王子、注…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 4
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 7
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 10
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中