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FRB当局者、予想より速い支援策縮小を示唆 見解は一致せず

2021年08月05日(木)06時04分

米連邦準備理事会(FRB)のクラリダ副議長は4日、米経済が新型コロナウイルス禍から驚異的なペースで回復していることを踏まえると、2023年に利上げが可能になる公算が大きいとの見方を示した。写真は2020年5月撮影(2021年 ロイター/Kevin Lamarque)

[ワシントン 4日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)のクラリダ副議長は4日、米経済が新型コロナウイルス禍から驚異的なペースで回復していることを踏まえると、2023年に利上げが可能になる公算が大きいとの見方を示した。

この日は、セントルイス地区連銀のブラード総裁とダラス地区連銀のカプラン総裁が、テーパリング(量的緩和の縮小)の早期着手を提唱。総合すると、FRBが予想より速いペースで景気支援を縮小させる公算があることが示された。

<見解の相違>

クラリダ副議長はピーターソン国際経済研究所でのオンライン討論で「利上げに必要な条件は22年末までに満たされると確信している」と表明。「23年に政策正常化を開始することは、こうした条件の下で、柔軟かつ新たな平均インフレ目標の枠組みと完全に一致する」と語った。

FRBの政策を巡っては、ウォラー理事がこのほど、向こう2回分の雇用統計で自身の予想通りに雇用がそれぞれ80万─100万人増加すれば、FRBは10月までに量的緩和措の縮小に着手する可能性があると予想。一方、ブレイナード理事は、緩和の縮小には国内労働市場の一段の改善が必要だと指摘。パウエル議長は先週、利上げ検討には程遠いとの認識を示している。

IIIキャピタル・マネジメントのチーフエコノミスト、カリム・バスタ氏は、「理事が異なる見解を公に表明するのはかなり珍しい」とし、FRB内で見解の相違がうかがえると述べた。

<量的緩和縮小>

セントルイス地区連銀のブラード総裁はこの日、米紙ワシントン・ポストのインタビューに対し、米国の雇用は毎月約50万人のペースで増加し、労働市場は来年の夏までに新型コロナウイルス禍前の水準を回復する軌道に乗るとの見方を表明。来年夏までに雇用がコロナ禍前の水準に戻れば、FRBが掲げる利上げの条件が達成されやすくなる可能性があると述べた。

また、FRBが来年、必要に応じて利上げできるよう、早期にテーパリング(量的緩和の縮小)に着手する考えに改めて支持を示した。

ダラス地区連銀のカプラン総裁はロイターのインタビューに対し、FRBは量的緩和の縮小に「近く」着手する必要があるとし、そうすることにで利上げに「忍耐強く」対処するための柔軟性が増すとの考えを表明。「7月と8月の雇用統計で進展が続けば、近く量的緩和の縮小に着手するのが得策だ」と述べた。

ただ、政策金利と量的緩和の議論を切り離す必要があるとし、「私の発言は、FF金利(の誘導目標)を巡り一段と積極的になる意向があることを示すものではない」と語った。

FRBの現在の毎月の資産買い入れペースは、国債が800億ドル、住宅ローン担保証券(MBS)が400億ドル。クラリダ副議長は、量的緩和の縮小について「年内に」当然、何らかの発表があると指摘したが、FRB内でまだ合意が見られない中、労働省が6日に発表する7月の雇用統計が注目されている。

ロイター
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