ニュース速報

ビジネス

米、「為替操作国」指定ゼロ 日中韓など11カ国を監視対象

2021年04月17日(土)15時40分

米財務省は16日、貿易相手国の通貨政策を分析した半期為替報告書を公表した。写真は2011年1月撮影(2021年 ロイター/Kacper Pempel/File Photo)

[ワシントン/チューリヒ/台北 16日 ロイター] - 米財務省は16日、貿易相手国の通貨政策を分析した半期為替報告書を公表し、スイスとベトナム、台湾が為替相場を操作した可能性があるとしながらも、「為替操作国」の認定は見送った。中国、日本、韓国など11カ国を通貨政策の「監視対象」に指定した。

今回の報告はバイデン政権下で初めて。イエレン財務長官は声明で「自国通貨の相場を人為的に操作しようとする外国政府の動きに、財務省は絶えず目を光らせている」とした。

<バイデン政権で「為替操作国」ゼロに>

トランプ前政権下の2020年12月の為替報告書では、スイスとベトナムを為替操作国に指定し、台湾、タイ、インドを通貨政策の「監視リスト」に追加していた。

財務省は今回、スイス、ベトナム、台湾について、為替操作に相当する対応がみられたが、認定するだけの十分な証拠は得られなかったと説明した。今後、公式協議を含む「エンハンスト・エンゲージメント」を行い、為替相場の過小評価と対外不均衡の過小評価の基調的な原因に対応するために特化した行動計画を策定するよう呼び掛ける。当事国との協議が、為替操作したか判断する一助となるとした。

発表を受け、スイス国立銀行(中央銀行)は「スイスはいかなる為替操作も行っていない」と表明。引き続き市場介入を行う用意があるとの立場を示した。

台湾中央銀行の当局者は匿名を条件にロイターに対し、米国が台湾を為替操作国に指定しなかったことは、台湾が米国と効果的に対話を続けていることを示していると指摘。米当局は台湾の「特別な状況」を理解しているとの見方を示した。

マッコーリー・グループのグローバル金利・為替ストラテジスト、ティエリー・ウィスマン氏は「規則に基づく決定というより、政治的な決断との印象を受ける」とし、「バイデン政権は中国との対応で重要になる同盟国を刺激しないようにしているようにみえる」と述べた。

ベトナム中央銀行は17日、引き続きインフレ抑制、マクロ経済の安定を図りつつ貿易で不当に優位にならない形で柔軟な為替政策を実施していくと表明した。

<中国、日本など監視対象>

今回、中国、日本、韓国、ドイツ、アイルランド、イタリア、インド、マレーシア、シンガポール、タイ、メキシコの11カ国が監視リストの対象となった。アイルランドとメキシコ以外は昨年12月の報告で監視対象となっていた。

中国に対しては、外国為替市場への介入、為替レート管理システムの政策目標、中国人民銀行(中央銀行)と国有銀行の外国為替相場を巡る活動の関連性、オフショア人民元市場での活動に関する透明性の向上を呼び掛けた。

タイ中銀は、引き続き監視対象になったことについて、ビジネス面やマクロ経済政策能力への影響はないとの見解を示した。為替相場を利用して貿易で不当に優位に立とうとしたことはないと表明した。

<コロナ禍という特殊事情>

米財務省当局者は今回の報告書について、新型コロナウイルス感染拡大に起因する貿易と資本フローの大幅な阻害に加え、コロナ禍に対応するための各国の財政・金融政策を考慮したと説明。コロナ禍がなければ、スイス、ベトナム、台湾に対する対応を含め「異なる結果が出ていた可能性がある」と述べた。

報告書は、国・地域によって回復ペースがまちまちで、新型コロナ禍は来年にかけて経常収支に影響を及ぼし続けるとの見方を示した。

*内容を追加しました。

ロイター
Copyright (C) 2021 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏がBBC提訴、議会襲撃前の演説編集巡り巨

ビジネス

英総合PMI、12月速報は52.1に上昇 予算案で

ビジネス

独ZEW景気期待指数、12月は45.8に上昇 予想

ワールド

ウクライナ提案のクリスマス停戦、和平合意成立次第=
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連疾患に挑む新アプローチ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 8
    アダルトコンテンツ制作の疑い...英女性がインドネシ…
  • 9
    FRBパウエル議長が格差拡大に警鐘..米国で鮮明になる…
  • 10
    「なぜ便器に?」62歳の女性が真夜中のトイレで見つ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 8
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 9
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中