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焦点:米中貿易ポーカー、投資家が賭けるトランプの「手札」
3月28日、「賭け」を生業とする米ウォール街の金融マネジャーたちにとって、トランプ米大統領の通商面での対中強硬姿勢は、高額な賭け金がかかったポーカーの手のように見えている。写真はホワイトハウス22日、中国が米国の知的財産権を侵害しているとして最大600億ドルの輸入品への課税方針を署名するトランプ米大統領(2018年 ロイター/Jonathan Ernst)
Noel Randewich
[サンフランシスコ 28日 ロイター] - 「賭け」を生業(なりわい)とする米ウォール街の金融マネジャーたちにとって、トランプ米大統領の通商面での対中強硬姿勢は、高額な賭け金がかかったポーカーの手のように見えている。だが彼らは、全力で参加できると踏んでいるようだ。
トランプ氏が貿易摩擦を引き起こすのではないかとの不安は、同氏が輸入鉄鋼とアルミニウムに関税を課す方針を表明し、主要貿易相手国の中国や欧州、隣国カナダから報復措置を受ける恐れが表面化した3月1日以降、ウォール街に渦巻いている。
それ以降、市場はジェットコースターのような展開となっている。
トランプ氏が中国からの600億ドル(約6.4兆円)の輸入品に関税を課すと表明し、中国が米国に「崖から戻る」よう要請しつつ、報復として米国からの輸入品30億ドル相当に関税をかけると反発した23日には、世界で株価が下落した。
だが、中国が交渉に応じる姿勢を見せると、26日に株価は反発。しかし翌27日には、テクノロジー株を巡る神経質な動きが、再び株価を押し下げた。
投資家は引き続き、世界の2大経済大国である米中間の貿易戦争を懸念している。だが大口投資家の中には、トランプ氏の通商戦略を分析しつつ、一稼ぎしようと前のめりになっている人々もいる。
著名実業家だったトランプ氏が2日、「貿易戦争は良いことだ。簡単に勝てる」とツイートし、エコノミストに衝撃を与えた。エコノミストたちは、過去の貿易戦争が、巻き込まれた経済に破壊的な影響を与えたとの証拠を引用している。
「これまでの政権は、中国のような貿易相手国に対してより公平な取引を求めては、葉巻の火を額に押し当てられて消されるような対応を受けてきた」と、フェデレーテッド・インベスターズのポートフォリオマネジャーのスティーブ・キアバロン氏は指摘。「慣例を破るトランプ氏のやり方は、完全に彼なりの交渉戦術だろう」と述べた。
キアバロン氏などは、依然として今年はS&P総合500種<.SPX>が大きく上昇するとの見方だ。
「今のところ、話が出ているのは、特殊な輸入品への少額関税だ。割安なバリュエーションを捉えて投資を始める機会を探している人には、今がそのチャンスだ」と、ランデンバーグ・サルマン・アセット・マネジメントのフィル・ブランカート最高経営責任者(CEO)は言う。
<ディールなるか>
「トランプ氏は、素早く攻撃的に、かつ一方的に動いてきた。それにより、中国を交渉のテーブルに引っ張り出した」と、イベントシェアーズのベン・フィリップス最高投資責任者(CIO)は言う。「私は、中国が、トランプ氏が一方的に行動して中国経済に損害を与えることを心配していると本当に考えている」
米国の多国籍企業に打撃を与え、今年施行された大型法人減税の恩恵をかすませる恐れがある貿易戦争への懸念は、2月末以降S&P総合500種を4%近く下落させた。
トランプ政権は、3750億ドルの対米貿易黒字のうち1000億ドルを即座に削減するよう中国に要請。これを、長い交渉の糸口を開かせるための作戦と見る向きもある。
中国はこれに対し、米国の多国籍企業や、2016年の米大統領選でのトランプ氏勝利に貢献した地方の農家をターゲットにした関税措置で対抗する可能性がある。
トランプ氏の貿易相手国に対する好戦的な対応は、1987年に発表した著書「トランプ自伝―不動産王にビジネスを学ぶ(Trump: The Art of the Deal)」で説明した交渉スタイルを反映していると、ブルダーマン・アセット・マネジメントの首席市場ストラテジスト、オリバー・パーシェ氏は言う。
「何かとんでもないことをまず提案する。それから後退すれば、こちらが要求するものは恐れていたほど痛くなくなる」と、パーシェ氏は分析。「問題は、相手もバカではないことだ。いずれ、手の内を知られてしまう」
(翻訳:山口香子、編集:伊藤典子)