KBN3CO02B
11月22日、 トランプ米次期大統領は、米経済や国際金融経済に多大な影響力を持つ財務長官に、著名投資家のスコット・ベッセント氏(写真)を指名すると発表した。ノースカロライナ州アッシュビルで開かれたトランプ氏の選挙集会で8月撮影(2024年 ロイター/Jonathan Drake)
Steve Holland Alexandra Ulmer
[22日 ロイター] - トランプ米次期大統領は22日、米経済や国際金融経済に多大な影響力を持つ財務長官に、著名投資家のスコット・ベッセント氏(62)を指名すると発表した。
トランプ氏は自身のソーシャルメディアに、「第79代財務長官にスコット・ベッセント氏を指名することを喜ばしく思う。スコットは、世界最高の国際投資家および地政学的、経済的戦略家の1人として尊敬されている」と投稿した。
トランプ氏は関税を通じて世界貿易を改革する意向を示しており、財務長官人事はウオール街などから大きな注目を集めていた。
財務長官候補には、ベッセント氏のほか、アポロ・グローバル・マネジメントのマーク・ローワン最高経営責任者(CEO)やウォーシュ元米連邦準備理事会(FRB)理事が含まれていた。投資家のジョン・ポールソン氏も有力候補だったが、ウオール街のベテランであるもう一人の候補者ハワード・ラトニック氏が商務省長官に任命されたため、辞退した。
ベッセント氏は米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)に最近寄稿したオピニオン記事で、特に銀行融資とエネルギー生産の促進に向けた税制改革や規制緩和を主張。トランプ氏の大統領選勝利後に米株式市場などが大幅上昇したのは「より高度な成長、より低いボラティリティーとインフレ、そして全ての米国民のための経済の活性化」に対する投資家の期待を示していると述べた。
ベッセント氏は、元ゴールドマン・サックス幹部のロバート・ルービン氏、ハンク・ポールソン氏、第1次トランプ政権のスティーブン・ムニューシン氏らに続く、金融界出身の財務長官となる。女性初の財務長官となったイエレン現財務長官は、連邦準備制度理事会(FRB)議長やホワイトハウス経済諮問委員会(CEA)委員長を歴任した。
<経済のクォーターバック>
財務長官として、ベッセント氏は、財政、国債市場の管理、市場危機への対応や予防を含む金融規制の監督などを担う。
トランプ氏は、来年期限切れとなる減税措置の延長などを選挙戦で打ち出している。これらが実施されれば、財政赤字が大きく膨らむ見通しで、そのかじ取りがベッセント氏の課題になる。ベッセント氏は、トランプ氏の政策はより強力な経済成長をもたらし、歳入を増やし市場の信頼を強化すると主張している。
トランプ氏が支援に消極的な対ウクライナ支援や気候変動対策を巡る対応も、次期政権で方針が変わる可能性がある。
<「影の」FRB議長構想>
財務長官は、政権とFRBの橋渡し役でもある。バイデン政権のイエレン氏もトランプ政権のムニューシン氏も、毎週のようにパウエルFRB議長と朝食や昼食を共にしていた。
ベッセント氏は「影の」FRB議長を創設する案を提唱した。これは、2026年5月に任期が終了するパウエル議長の後継候補をできるだけ早くFRB理事会に送り込み、独自の政策指針を示すことを想定する。「パウエル氏の発言を誰も気にしなくなる」とベッセント氏は先月バロンズ誌に語っている。
FRB理事会で次に空席となるのはクーグラー理事で、任期は26年1月まで。WSJによると、ベッセント氏はその後、影の議長というアイデアは追求する価値がないと考えていると述べた。