高尚なナンセンスだろうか。「自由に浮動する知識人」(K・マンハイム)の幻に憑かれた前世紀のたわごとだろうか。そうかもしれない。しかし、それでも、知識人や既成メディアに今後なお何らかの意義があるとすれば、微かな光がここにある。結局、知識人の存立のみならずおよそ政治的な議論をおびやかしているゆえんのものは、見たいものだけを見て、聞きたいことだけを聞き、信じたいことだけを信じていたいという、怠惰と幼稚なのだから。
島田 英明(しまだ ひであき)
東京大学法学部特任講師
2016年度サントリー文化財団鳥井フェロー