所得と貯蓄の世帯数集計で分かる、日本社会の「富の格差」

2021年11月10日(水)10時30分
舞田敏彦(教育社会学者)

その生活保護だが、コロナ禍で困り果てる人が増える中、受給者は増えているだろうと思われるが現実は違う。生活保護受給者数の推移の近況を棒グラフにすると、<図2>のようになる。2019年7月から2021年7月までの月単位の変化だ。

ご覧のように真っ平だ。コロナ禍だというのに保護受給者は増えておらず、よく見ると微減の傾向すらある。これでは「日本の生活保護は定員制なのか」という疑問も禁じ得ない。恥の意識につけ込んだ扶養照会(申請者の親族に援助できないか問い合わせる)などの水際作戦も功を奏しているのだろう。

なお同じ期間にかけて、母子世帯の保護受給世帯は明らかに減っている。京都の亀岡市では、2015年度から19年度にかけて母子世帯の保護利用が大幅に減っているのはどういうことか、削減のターゲットにされているのではないかと、市民団体が調査に乗り出すとのことだ(11月9日、京都新聞Web版)。

日本では世帯の貧困化が進んでいて、最後のセーフティーネットである生活保護も十分に機能していない。どうにもならず自殺者(とくに女性)が増え、自棄型の犯罪が起きるのも道理だ。まずは生活保護の運用の見直しが必要で、効果が定かでない扶養照会などは廃止を検討するべきだろう。

<資料:厚労省『国民生活基礎調査』
    厚労省『被保護者調査』

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