アフガニスタン撤退は、バイデンの「英断」だった

2021年8月26日(木)11時01分
グレン・カール(本誌コラムニスト、元CIA工作員)

バイデンは米軍撤収の計画は変わらないと断言した ELIZABETH FRANTZーREUTERS

アフガニスタンには欧米寄りの新政権が誕生したが、米政府は米軍撤収後にタリバンとアルカイダの残党が再び勢力を拡大することを警戒した。

実際、敗走したタリバンは、国境のパキスタン側の山岳地帯に逃れて態勢を立て直した。パキスタン政府から資金や武器の援助も受けていた。

80年代にソ連がアフガニスタンに侵攻していたとき、パキスタンはCIAから資金を得て、アフガニスタンの武装勢力であるムジャヒディン(イスラム戦士)たちを支援していた。

パキスタンは、当初はムジャヒディン、94年以降はタリバンを利用してアフガニスタンに影響を及ぼそうとした。米軍のアフガニスタン侵攻後も、米側の抗議を無視してタリバン支援を続けた。

グローバルな対テロ戦争が想定していたのは、イスラム過激派のテロ組織は全て共通のイデオロギーと世界戦略で結ばれたネットワークを形成していて、その頂点にビンラディンとアルカイダが君臨している、という構図だ。米情報機関は世界の80以上の国と地域にアルカイダの支部があると警告していた。

これは誤りだった。アルカイダの永続的な組織が存在するのは6カ国のみ。ジハーディスト(聖戦主義者)は共通のイデオロギーはあるが、多くは世界戦略ではなく、地域の勢力争いに没頭している。

「文明の衝突」という考えの誤り

対テロ戦争にはまた、ジハーディストが自由主義の国々を攻撃するのは「私たち(自由主義の国々)の在り方が気に食わないからだ」という前提があった。そこから、これは「文明の衝突」だという考え方が生まれた。

だがジハーディストを突き動かすのは「私たちの在り方」ではなく「私たちがやること」だ。

彼らの多くは、米軍のアフガニスタン占領など特定の行為や状況に抵抗している。つまり、彼らは「反乱分子」であってテロリストではない。タリバンは反乱軍だが、米政府はテロ組織と見なしてきた。

アメリカは、9.11テロの首謀者であり、アルカイダの指導者であるビンラディンが潜伏するアフガニスタンに侵攻した。ところが、ビンラディンをかくまっているタリバン政権のことはすぐに倒せたが、ビンラディン自身がなかなか見つからない。

このためアメリカのミッションは、タリバンの権力奪回を防ぐことへとシフトした。そのために、新生アフガニスタンの政府や警察を強化する「国家建設」が欠かせないと考えるようになった。

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