武漢研究所は長年、危険なコロナウイルスの機能獲得実験を行っていた
RaTG13に関するもう1つの疑問に答えを出したのもリベラだ。その疑問とは、武漢の研究所は銅鉱山でRaTG13を発見してから7年の間に、このウイルスをいろいろいいじり回したのではないか、というもの。
ピーター・ダザックに言わせれば、答えはノーだ。RaTG13はSARSウイルスとさほど近縁ではなかったので、研究対象にならなかった。「面白いとは思ったが、さほど危険なウイルスではない」と、ダザックはワイアード誌に語った。「だから、特に何もせず、冷凍庫に入れた」
リベラは、この発言が嘘であることを証明した。ウイルスの遺伝子に関する新しい論文を発表するときには、執筆者は国際データベースにその配列を入力することになっている。武漢の研究所のスタッフがRaTG13の遺伝子配列と紐づけてうっかり入力したものがないか、リベラはメタデータのタグを詳細に調べた。そして2017年と2018年に、武漢研究所が熱心にRaTG13を研究していたことを突き止めた。冷凍庫にしまって、すっかり忘れていたというのは真っ赤な嘘だったのだ。
新型コロナの近縁種が9つも?
実際には、武漢の研究所はRaTG13をはじめ銅鉱山で採取したウイルスに並々ならぬ関心を寄せていた。リベラは自身が作成した巨大な数独パズルから、研究所のスタッフが最初の発見後少なくとも7回鉱山に行き、何千ものサンプルを収集したことを突き止めた。おそらく2012年と2013年の段階では解析技術がまだ未熟で、労働者を死に至らせたウイルスを特定できず、技術の改善に伴って、何度も採取に行き、解析を行なったのだろう。
リベラは大胆な予想も立てた。彼は複数の情報源から得た情報の断片を照らし合わせ、2020年8月1日付のツイッターのスレッドにある推測を投稿した。武漢ウイルス研究所が過去に作成したある論文の中で、短く言及されている「8つのSARS関連ウイルス」の起源が、RaTG13と同じ墨江ハニ族自治県の鉱山にあるのではないかという推測だ。
これはつまり、この鉱山で見つかった新型コロナウイルスの近縁種は1つではなく、9つだったという意味だ。石正麗は2020年11月に発表した(RaTG13について言及した同年2月の論文の)追加資料の中で、さらには2021年2月の発言の中でも、雲南省の洞窟についてDRASTICが指摘した疑問の多くを認めている。