米軍に協力したアフガニスタン人、アメリカに見捨てられタリバンに殺される危機が迫る

2021年5月27日(木)21時17分
ロビー・グレイマー、ジャック・デッチ(フォーリン・ポリシー誌記者)

今のところバイデン政権は手続きの迅速化について、はっきりした計画を議会に示していない。このままいけばベトナム戦争終結時の二の舞いになると、民主・共和両党の議員は危機感を募らせている。「アフガニスタンをもう1つのサイゴンにしてはならない」。下院外交委員会の共和党のトップ、マイケル・マコール議員は議会でそう訴えた。「これはアフガニスタンでビザを待っている人だけの問題ではない。同盟国やパートナーがアメリカは約束を守らず、自分たちを見捨てると思ったら、アメリカの安全保障に致命的なダメージが及ぶ」

マコールは民主党のグレゴリー・ミークス下院外交委員長と連名でアントニー・ブリンケン米国務長官に書簡を送り、特に手続きが滞っている約3000人に早急にSIVを発給するよう求めた。

バイデン政権はできる限り迅速に対処していると主張する。「現地の米大使館での申請処理能力を増やすなど、リソースの改善・増強に取り組みつつ、(過激派などの入国を阻止すべく)引き続き厳正な審査を行っている」と、米国家安全保障会議(NSC)の報道官は弁明した。

見せしめの制裁を懸念

アフガニスタンの高官クラスの外交筋は匿名を条件に取材に応じ、米軍の通訳が国外に脱出できなければ、タリバンに報復されるとの懸念が現地でも広がっている、と明かした。

タリバンには通訳に制裁を加える動機があると専門家はみる。80年代末に旧ソ連軍が撤退した際、タリバンはソ連兵に協力したアフガニスタン人に厳しい制裁を加えなかった。そのため外国の軍隊に雇われるアフガニスタン人に歯止めをかけられなかった、とタリバンは後悔しているのだ。

「(米軍に雇われていた)人たちが(見せしめのために)報復されるリスクは極めて高い」と、スタンフォード大学の南アジア研究者、アスファンディアル・ミルは警告する。

バイデンが設定した米軍の撤退完了の期限は9月11日。政府が手続きを簡略化しなければ、それまでにはとてもSIVの発給は間に合わないと、議員や退役軍人らは懸念している。間に合わない場合は、通訳とその家族らを首都カブールか第三国もしくは他の米軍基地に一時的に避難させるべきだと、彼らは言う。

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