進む自衛隊とミャンマー国軍の将官級交流 クーデター首謀者も3度来日、安倍首相と会談

2021年5月4日(火)10時25分
水島了(日刊ベリタ記者)

それを裏付ける情報もある。国連人権高等弁務官事務所が作成したミャンマー国軍の武器や関連装備の調達マップによると、同教授の指摘通り、ミャンマーは中国、ロシア、イスラエル、ウクライナの他に、北朝鮮、フィリピン、シンガポール、インドなどアジア各国からも武器を調達していることが分かる。新たな調達先に日本を加えようというのだ。

だがこのようなミャンマー側の思惑は、けっして的外れとは言えない。安倍政権は2014年6月の閣議決定で、武器輸出を原則禁止したこれまでの「武器輸出三原則」を緩和したからだ。新たに策定された「防衛装備移転三原則」では、武器輸出は条件を満たせば認められるようになった。防衛産業の育成が狙いの一つで、その後日本は軍事装備輸出の努力を積み重ねてきた。今年3月には、三菱重工製の護衛艦をインドネシアに輸出する協定の締結に反対する市民団体の抗議行動があった。

ミャンマー国軍と日本の政府、軍需産業の思惑は基本的に一致しているとみられる。

求められる防衛省の説明責任

2013年の海自練習艦のヤンゴン寄港から始まった日本とミャンマーの防衛交流。「先進民主主義国家の"軍"の在り方などを見てもらう」ことを狙いとした将官級交流は効果があったのだろうか? 東日本大震災の教訓を伝授した自衛隊の能力構築支援事業の意図は伝わったのだろうか? 残念ながら、その答えはNOと言わざるを得ない。民主主義国家で国民の生命を守ることが自衛隊のミッションであるならば、現在その正反対のことをしているのがミャンマー国軍である。

防衛省制服組トップの山崎幸二統合幕僚長は、3月28日、米国など11カ国の参謀総長らとともに、クーデターを起こしたミャンマー国軍に対して「非武装の市民に軍事力を行使したことを非難する」との異例の共同声明を発表した。4月15日の防衛省の国会答弁によれば、ミャンマーに対する能力構築支援事業において、日本からミャンマーに派遣した人員はのべ92名、ミャンマーからの招聘者数はのべ50名、予算額は全体で2.1億円とのことである(現在は新型コロナウイルスの影響のため、日本語教育支援事業のみを実施)。

膨大な人員と予算を費やしながら進められた自衛隊とミャンマー国軍との交流成果が、軍事クーデターという最悪の帰結に至った。安倍首相をはじめとする日本政府とミャンマー国軍の思惑がどこにあったかは別にして、能力構築支援事業を人道支援と信じて現場で汗水たらしてきてきた自衛官の無念さと怒りは計り知れないだろう。

無実の市民を大量殺りくし、自衛官たちの善意を裏切ったミャンマー国軍。その罪は厳しく裁かれなければならない。ミャンマー国軍への対応を今後どのように進めていくのか、防衛省にはさらなる説明責任が求められる。

*この記事は、日刊ベリタからの転載です。

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