中国を礼賛し、民主化運動を妨害する欧米の若者たち「タンキー」が増殖中

2021年4月7日(水)16時38分
セバスチャン・スコウ・アンデルセン、トーマス・チャン

現時点で、タンキーたちの影響力は取るに足りない。欧米諸国の世論を動かすほどの力はないし、外交政策に与える影響も限られている。

「彼らに実質的な影響力はない」と言うのは、香港の民主活動家で現在は米ジョージタウン大学の博士課程に籍を置くジェフリー・オー。「活動する歴史家」として、香港の民主派政党デモシストの幹部を務めたこともある。「しかし彼らがSNSの世界にはびこり続ければ、現実の世界で民主主義のために戦っている人々にとって不愉快な方向に世論が誘導されかねない」

オー自身は、タンキーに反論をぶつけたりはしない。しかし自分のSNSアカウントでタンキー批判を繰り広げることはある。

オーが考えるに、最も差し迫った懸念はタンキーが、十分に証拠のある主張に異議を申し立て、建設的でない方向に議論を向け、より大きな中国の人権に関する議論の前提をゆがめることだ。

もう一つの重要な側面は、左翼の意味の定義をめぐる論争、つまり、共産党政権を支えるか、政権に抵抗するかという問題だ。極左マルクス・レーニン主義のグループだけが左翼ということになれば、タンキー以外の左翼が、それぞれの大義を推し進めていくことは極めて困難になるだろう。これが重要なのは、タンキーに立ち向かう人々の多くも、自分たちこそ左翼だと考えているからだ。

デモシストに参加し、香港の民主派を代弁し、抗議運動のシンボルとされてきたオーのような人物でさえ、今は一部の香港人からタンキー呼ばわりされている。彼が左翼思想の持ち主だからだ。

今の自由主義世界秩序が、欧米以外の場所に住む多くの人たちを苦しめているのは事実。だからこそ、それに取って代わるというタンキーたちのイデオロギーがもっともらしく聞こえてしまう。

オーは言う。「彼らには不動の世界観がある。まず、自由世界の国際秩序は間違っている。これが前段で、その自由世界の秩序に取って代わるのが中国だと続く。だから中国は常に正しいことになる」

奇妙な理屈だ。冗談じゃない、とオーは思う。

「私たちのような人間を抑圧している秩序に取って代わるのが中国だなんて、あり得ない。中国はその(抑圧的な)秩序の中核そのものだ」

©2021 The Diplomat

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