中国を礼賛し、民主化運動を妨害する欧米の若者たち「タンキー」が増殖中
現在では、中国が「奇跡」の経済発展を遂げたのは中国流の統治モデルが優れている証拠だと信ずる極左の自称マルクス・レーニン主義者を指す蔑称として用いられることが多い。ただし一部のマルクス・レーニン主義者が開き直って、タンキーを自称することもある。
いずれにせよ、彼らは体制(中国の場合は共産党と漢民族による支配)を守るためなら反対派(少数民族や民主派など)をつぶすのは当然と考える。「とにかく有害で不愉快だ」とムートは言う。「弾圧されている側の身になってみろ。こちらは警官に銃を突き付けられ、法律で自由を奪われているんだ」
タンキーたちは「海外の自由で安全な国にいて、お気楽な生活を送りながら、弾圧される側の私たちに向かって、おまえらの主張は間違っているとか、殺されて当然だとか決め付ける」。そんなのはおかしいとムートは怒る。
しかもタンキーの多くは若い世代。香港の民主派やイスラム教徒のウイグル人、アジア・アフリカ諸国の民衆など、中国共産党の拡張政策で犠牲になっている人々の間でタンキーへの懸念が高まるのは当然だろう。タンキーの声はまだ小さいが、(トランプ時代のアメリカを見れば分かるように)SNSにあふれる妄言が欧米諸国の世論や外交政策に影響を及ぼす事態は十分に想定し得る。だから警戒が必要なのだ。
欧米は資本主義を強制
一方、YouTubeでマルクス・レーニン主義を標榜し、登録者を2万人以上抱えるチャンネルを運営している自称ベイエリア415(匿名を希望)は、自分が中国政府を支持するのは、あの国がこの数十年で何億もの人民を貧困から救い出すことに成功したからだと主張する。
「中国は絶対的な貧困を根絶し、新型コロナウイルスの感染を封じ込め、急速な経済成長を遂げ、手厚い公的助成金や公共事業などを通じて富の分配を促進している。これを見れば、中国の統治システムこそ本物だと考えざるを得ないだろう」と、ベイエリア415は本誌に語った。
「中国のシステムは(欧米のそれとは)別物で、より優れており、効率的であることは明らかだが、中国は自国のモデルを輸出して他国を強制的に社会主義に変えようとはしていない。欧米の帝国主義者が資本主義を他国に強制しているのとは大違いだ」とも語り、こう続けた。「中国の人民民主独裁制は、自国の経済の舵取りを素晴らしくうまくやっている。市場原理を資本家ではなく、人民の利益のために使っている」