ミャンマーで中国資本の工場に放火、クーデターや弾圧を非難しない中国に反発も
<軍事クーデターに反対する人々に対する激しい弾圧が続くミャンマーで、国軍を支持していると疑われる中国に対する怒りも燃えている>
ミャンマーにある中国資本の工場が複数放火された事件が3月14日に起きたのを受け、中国外務省は翌15日にミャンマーの軍事政権に対し、同国に住む中国人たちの安全を確保するよう要求した。ミャンマーでは、民主化と反クーデターを訴える抗議デモに対する弾圧が強まっている。
3月14日には、デモ隊や警官など少なくとも38人が死亡した。国民によって選出された民主政権を退陣させるためのクーデターを国軍が2月1日に起こして以降で1日の犠牲者は最多となった。暫定軍事政権は現在、ヤンゴンの6地区に戒厳令を発令し、反クーデターを訴える大規模な抗議活動を鎮圧しようと躍起になっている。多数の逮捕者や行方不明者が出ているほか、軍が非武装のデモ隊に向かって発砲している。
ミャンマーの人権団体「政治犯支援協会」(AAPP)によると、クーデターが発生して以来、治安部隊によって殺害された人は126人を超えたとされている。
在ミャンマー中国大使館によると、3月14日に抗議活動が行われた際、中国資本の工場が数カ所、襲撃と放火を受け、複数の中国人が負傷した。中国は、ミャンマーと国軍にとって重要な同盟国だ。中国政府はクーデターの非難を避けているが、3月15日の外務省会見では、ミャンマーの治安部隊は中国関係者の安全を確保すべきだと述べた。
また、中国国営の中国国際テレビ(CGTN)によれば、中国大使館は3月14日に発表した声明で次のように述べている。「中国はミャンマーに対し、有効な手段をさらに講じて、すべての暴力行為を止めさせ、法律に従って犯罪者を罰するよう強く求める。ミャンマーで操業している中国の工場の財産と、従業員の生命の安全を確保するよう要求する」
中国資本の工場を誰が襲撃したのかはわかっておらず、犯行を認めた組織もない。中国の政府系英字紙「環球時報」は、中国資本の32工場が「激しい襲撃を受けて破壊された」と伝えており、被害総額は約3700万ドル、中国人の従業員2名が負傷したと報じた。
環球時報は社説でも、犯罪者を「厳罰に処すべき」だと主張し、襲撃は「明らかに綿密な計画に沿って行われた」ことをほのめかしている。
『デモ隊への非難は筋違い』
中国は暫定軍事政権と緊密な関係にあり、クーデターを非難していないため、民主政権を支持するデモ隊の多くは中国に疑念を抱いている。ミャンマー最大の都市ヤンゴンにある中国大使館の周辺では、国軍が政権を握ったことに対する抗議活動が続いている。
国連安全保障理事会は10日、「平和的なデモ参加者に対する暴力を強く非難」し、軍に「最大限の自制」を求めるという内容の声明を出しており、中国政府はその内容を支持している(ただし原案にあったクーデターに対する非難や追加対応の示唆は、中国やロシアなどの反対で削除された)。しかし、国軍に反対する勢力は、中国にはもっとできることがあると訴えている。
中国大使館は3月14日に出した声明で、デモ隊に対し、自分たちの要求は法に従って表明し、中国とミャンマーの関係を損なわないよう求めた。中国は香港と合わせると、2019年から2020年度における最大の対ミャンマー投資国となっている。
反クーデターのデモ隊を率いる若手活動家のティンザー・シュンレイ・イーは3月15日付けのツイッターで、中国政府がビジネスの権益を守りたいなら、クーデターを非難することがいちばんの方策だと述べた。「中国政府がミャンマーとの関係を大切にし、ミャンマーで操業する中国企業を守りたいのなら、クーデター政権を支持するのを止めなるべきだ」
イーはさらにこう述べた。「(デモ隊は)中国人に反感を抱いているわけではない。私たちは、隣国同士として良い関係を保ってきた。しかし、このたびの声明でミャンマー人が激しい怒りを覚えたことを、中国共産党は理解しなくてはならない」
(翻訳:ガリレオ)
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