過去最悪の治安情勢で、祖国アフガニスタンを捨てる人たち

2021年3月3日(水)17時00分
ステファニー・グリンスキ(ジャーナリスト、写真家)

アメリカに裏切られた

「01年以降、多くのアフガニスタン人が帰国し、故郷でのキャリアや生活の構築に投資した。14年に駐留米軍が大規模撤退したときも、多くが故国にとどまって問題解決に取り組む道を選んだ」と、アクバルは言う。「そうした人たちが今、国を去っていることがつらい。そこにあるのは真の絶望というメッセージだ」

国外脱出の動きは広がっている。マスード・アフマド・ニアズ(37)と妻のブラシュナは、隣国パキスタンへの移住を決断した。第1希望の移住先ではないが、資金が十分でなく、パキスタンのビザなら入手が容易だったからだ。

マスードは20年近くの間、駐留米軍の下で機械工として働いていた。米軍部隊に協力した地元住民を対象とする再定住支援プログラムに基づき、アメリカの特別移民ビザを申請したが、トランプ政権だった昨年、説明もないまま却下された。

子供たちは何カ月も外で遊べないでいると、ブラシュナは話す。「子供たちにとっては刑務所暮らしのようなもの。暴力事件があまりに多過ぎる。普通の子供時代を過ごし、平和の中で成長してほしい」

「アメリカ人のために働いたが、裏切られた」。カブール市内の自宅アパートで、米軍兵士らと一緒に撮った写真を見ながらマスードが言う。

「夜もほとんど眠れない。パキスタンへの脱出が私たちの唯一の選択肢だ。アフガニスタンはもう安全ではない。タリバンが復活したら、私たちの居場所はなくなる」

<本誌2021年3月9日号掲載>

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