新型コロナのスーパー・スプレッダーになりやすい3つの要因が明らかに
<ハーバード大学などの研究チームは、スーパー・スプレッダーになりやすい要因は「年齢」、「BMI(肥満度)」、「新型コロナウイルス感染症の経過」という3つの要因と関連していることを示した......>
重症急性呼吸器症候群(SARS)や腸チフス、エボラ出血熱など、これまでに発生したアウトブレイクでは、多くの人々に感染を広げる「スーパー・スプレッダー」が存在した。一般的には、20%の感染者が感染症例数の80%に関与していると考えられている。
「年齢」、「肥満度」、「感染症の経過」の3つの要因
米ハーバード大学、テュレーン大学、マサチューセッツ工科大学(MIT)の共同研究チームは、「スーパー・スプレッダーは小さな呼吸器飛沫を大量に吐き出す性質がある」ことに着目し、新型コロナウイルスのスーパー・スプレッダーになりやすい要因を分析。
「年齢」、「BMI(ボディマス指数、肥満度を表す)」、「新型コロナウイルス感染症の経過」という3つの要因がこの性質と関連していることを示した。一連の研究成果は、2021年2月23日発行の「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」で発表されている。
研究チームは、米国に在住する19〜66歳の健康な成人194名を対象に、呼気粒子の観察研究を実施。その結果、高齢でBMIが高いほど、呼気に含まれる呼吸器飛沫の数が多く、18%に相当する35名が被験者全体の呼気中のバイオエアロゾル(生物由来の粒子状物質)の80%を占めていた。これは、他の感染症の流行でみられる「2対8の法則」とも類似する。
感染後7日目、ウイルス粒子がもっとも小さくなった
研究チームは、アカゲザルとミドリザルの計8匹を新型コロナウイルスに感染させ、経過を観察した。その結果、感染後7日目にウイルス価が最も高くなり、14日目には減少した。また、新型コロナウイルス感染症が進行するにつれてウイルス粒子は小さくなり、ウイルス価のピーク時には、その大きさがわずか1ミクロンとなった。
小さな粒子は、呼吸や咳、発話で、より排出されやすく、空気中に長時間漂い、より遠くまで移動し、吸い込んだときに肺の奥まで届きやすい。
研究論文の責任著者でテュレーン大学のチャド・ロイ教授は「新型コロナウイルス感染症の無症状病原体保有者であっても、呼気中のエアロゾルは増加する。気道のウイルス感染によって気道粘液が弱まり、ウイルスの感染粒子が移動しやすくなるのではないか」と考察している。気道での呼吸器飛沫の生成には個人差がある。
若い人は高齢で肥満の人よりも呼吸器飛沫を排出しづらいが......
研究論文の筆頭著者でハーバード大学のデイビッド・エドワーズ博士は「今回の研究結果では、若い人は高齢で肥満の人よりも呼吸器飛沫を排出しづらいことが示されたが、サルでの実験結果をふまえれば、誰もが、新型コロナウイルスに感染すると、大量の呼吸器飛沫を排出するおそれがある」と指摘している。
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