中国はミャンマーの軍事クーデターを支持したのか
それでもおそらく中国はフラインに彼の計画を進める許可をはっきりとは伝えなかった。だがフラインはいずれにしても、中国を味方に引き入れ、助けを期待することができると考えた。
中国がアメリカを尻目にアジアでの影響力を拡大する機会を逃すことはほとんどない。だからアメリカとその同盟国がミャンマーに制裁を課そうとする場合、中国当局はそこでリーダーシップを発揮して、自国の利益のために介入するはずだと踏んだのだ。
これは、ジョー・バイデン米大統領の新しいチームにとって初の、外交力を試される大きな問題であり、ミャンマーの人々と中国政府の野望の両方を見据えて処理されなければならない。アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官は正しく、適切に、軍事クーデターに対する非難を表明した。
だが中国政府はクーデターへの全面的な支持を公表していない。少なくとも公の場では、国軍と国民民主連盟の和解を支持しているようだ。
フラインがはっきりした中国の支持のないままに、クーデターに踏み切ったという可能性もある。中国政府は取るに足りない属国の国内政治の計画を支持せざるを得ない立場に追い込まれることを不快に思ったのかもしれない。
そうであれば中国は、クーデターを起こしたミャンマー国軍をアメリカと協力して打ち倒す可能性もある。最悪の場合、ミャンマーは再び完全な鎖国状態に戻るかもしれない。だが一方、大規模な市民デモが起きる可能性も高く、より民主的な憲法と文民政府を取り戻すきっかけになる可能性のほうが高いだろう。
安保理で拒否権発動するか
そこには思いがけないメリットがあるかもしれない。ミャンマーにおける「一帯一路」構想の展開に伴う中国政府の商業的利益を認める代わりに、アメリカは、中国のミャンマーへの影響力を借りてロヒンギャ難民の危機を人道的に解決させることができる。
ミャンマーだけでなく、米中間にも真の共通の利益が見つかるという実に楽観的な結末だ。
最も楽観的にことが運んだ場合、このシナリオがありうる。だが中国政府がクーデターを事前にそれとなく支持していたという可能性もある。その場合、アメリカは中国に対しこの問題をしつこく追及して、クーデターを支持するのか、しないのか、手の内をさらさせるべきだ。たとえば、中国はクーデターに対する安保理の非難決議に拒否権を発動するだろうか。
もしそうなら、中国は国内だけでなく周辺国でも、民主主義に対する締め付けをさらに強化することになる。習近平政権は、中央アジアの独裁政権を支持し、香港の新興民主主義を押しつぶすだけでなく、近隣の発展途上の民主主義国を積極的に覆すつもりだ、ということになる。