【現地ルポ】民主主義の砦が汚された、アメリカの一番醜い日

2021年1月9日(土)17時10分
ジャック・デッチ、エイミー・マッキノン、ロビー・グレイマー、コラム・リンチ (いずれもフォーリン・ポリシー誌記者)

暴徒が議事堂に押し寄せたのは、ホワイトハウス近くで開かれたトランプ支持者の集会の後だった。集会で演説したトランプは、議会に行って選挙の手続きに抗議せよと支持者をあおった。

議事堂内で胸を撃たれた女性が死亡したと報じられた。この日の午後、議事堂では前例のない光景が展開された。捜査機関は議事堂の敷地内で即製の爆弾を発見している。

トランプにも制御できない

法律上、首都コロンビア特別区の州兵に対してはワシントン市当局に指揮権限がない。指示できるのは最高司令官であるトランプであり、その指揮統制権限を委任される形でマッカーシー陸軍長官の指揮下に入る。

議事堂で暴力的な抗議行動が始まったとき、ワシントンには約340人の州兵が配置されていた。だが武装はしておらず、しかも議事堂から離れた地域に配備されていた。

ワシントンのすぐ北にあるメリーランド州モンゴメリー郡の警察小隊も、6日の午後遅くに議事堂に到着した。議事堂内にはFBIの特殊部隊もいた。

国防総省とCIAで勤務した経験があるエリッサ・スロトキン下院議員(民主党)は6日、マーク・ミリー米陸軍参謀総長と会談の後、州兵部隊には現地の法執行機関と協力して議事堂内のデモ隊を排除し、「秩序を回復する」権限があるとツイートした。

バージニア州知事が動員した州兵が誰の指揮下で活動しているかは、しばらく明らかではなかった。だが各州と地域が相互に結んだ援助協定によって、コロンビア特別区州兵と同じく、州外の部隊が陸軍長官の指揮系統に入ることは可能だ。

ガスマスクを手に避難する議員たち TOM WILLIAMS-CQ-ROLL CALL, INC/GETTY IMAGES

激しさを増していく暴動は、選挙結果を覆そうというトランプの試みが手に負えない状態になりつつあることを示していた。共和党内からの圧力を受けて、トランプはデモ隊に向けて「平和的な行動を。暴力はなしだ!」とツイッターで呼び掛けたが、議事堂内にいる暴徒に表に出ろとは、はっきりと言わなかった。

選挙結果を覆す試みには反対だったマイク・ペンス副大統領は、デモ参加者は法を最大限に適用して起訴されることになると語った。その後トランプはビデオメッセージでデモ隊に「家に帰る」よう呼び掛けたものの、ここでも根拠のない選挙不正の主張を繰り返した。

バイデンは演説の中でトランプに対し、自らテレビ演説を行って暴力を非難するべきだと促した。「少数の過激派が違法行為に走っている」とバイデンは語り、「暴徒たちを引き下がらせ、民主主義の手続きが進められるようにするべきだ」と呼び掛けた。

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