香港をロシア式「鳥籠民主主義」の実験場にする中国共産党

2020年12月10日(木)19時40分
サイモン・シェン(香港中文大学客員准教授)

一方の野党勢力は議会で多数を占める見込みもなく、ロシアのようにポケット野党に成り下がるか、政治参加を諦めるかの選択を迫られている。陣営内で論争が起こり、限られた資金と支持をめぐる争いが生じ、同志がいがみ合っている。以前は脇に置いたはずの意見の違いが立ちはだかる。

香港の国家安全維持法は、積極的な発言に対する住民の支持表明を制限する。今では高い志を掲げれば、逮捕の危険が伴う。しかし外国に逃げていては、長期にわたって支持を保てない。中国政府は同法の普遍的な管轄権を強みとし、国外でも反体制派を取り締まるだろう。

香港市民のために用意された選択肢のいずれもが、選択があるという幻想しか与えそうにない。その先に無力感を生じさせることが、鳥籠民主主義の究極の目標なのか。

この実験が香港で成功すれば、中国の他の地域でも行われる可能性がある。世界の民主国家のリベラルな指導者たちは、民主主義と自由主義の定義がゆがめられたことに気付かずに、中国が民主化を果たしたと見なすかもしれない。

香港が中国に普遍的価値観を輸入させるための玄関口でなくなり、逆に世界に向けて「中国モデル」を輸出するための実験場になるとしたら、これ以上の皮肉はない。

From thediplomat.com

<2020年12月15日号掲載>

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