多様化する引きこもり 9割がコンビニOK、20年働いた後に引きこもる人も
引きこもり問題縮小化に向けた著者の提言
かように引きこもり問題は複雑で、引きこもっている人たちの年齢や考え方も多種多様。ましてや親の世代と彼らとの間には、社会との関わり方や価値観にも大きな相違がある。
また、これから先、引きこもりの人がさらに増えていくことも十分に予想される。決して極論ではなく、身内の誰かが将来的に引きこもりになることもあり得るだろう。
では、われわれは彼らとどう接していけばいいのだろう? なかなか答えが出そうもないこの問題について、著者は次のような意見を述べている。
引きこもりの問題はゼロにはなりませんが、100万人という現状からは脱することができるはずです。それには、引きこもりの多様化を認識し、支援の多様化を推し進めるとともに、生き方の多様化の定着が必要です。このスピードが、引きこもり問題縮小化のスピードにつながります。そのためには上の世代は子ども世代の生き方を否定しないことが大切ですし、スピードを速めるには上の世代から積極的に歩み寄り、認める必要があります。そうやって、時代の変化のスピードを速めるのです。(204~205ページより)
もちろんそれは、決して簡単なことではないはずだ。
しかし、長く引きこもっている人の多くは、生きる途中でつまずき、動けなくなっている状態にある。だとすれば、そんな人たちに寄り添い、手を差し伸べることも必要ではないか。そして、彼らの生き方や考え方、失敗体験などを認め、受け入れることこそが必要ではないだろうか。
『コンビニは通える引きこもりたち』
久世芽亜里 著
新潮新書
(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)
[筆者]
印南敦史
1962年生まれ。東京都出身。作家、書評家。広告代理店勤務時代にライターとして活動開始。現在は他に「ライフハッカー[日本版]」「東洋経済オンライン」「WEBRONZA」「サライ.jp」「WANI BOOKOUT」などで連載を持つほか、「ダ・ヴィンチ」などにも寄稿。ベストセラーとなった『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)をはじめ、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』(日本実業出版社)など著作多数。新刊は、『書評の仕事』(ワニブックス)。2020年6月、日本一ネットにより「書評執筆本数日本一」に認定された。
- 前のページ
- 3/3