多様化する引きこもり 9割がコンビニOK、20年働いた後に引きこもる人も
<「引きこもり」と言えば、ずっと自室から出ることがなく、親もその姿を見ない――勝手なイメージが広がっているが、日本に100万人いる引きこもりの現状は多種多様だ>
『コンビニは通える引きこもりたち』(久世芽亜里・著、新潮新書)の著者は、1994年から引きこもりなどの若者の支援をしている「認定NPO法人ニュースタート事務局」のスタッフ。訪問活動と共同生活寮の運営が同法人の業務の中心で、これまでに1600人以上を支援してきたという。
本書ではそんな経験に基づき、引きこもりと彼らを取り巻く状況について説明している。
ところで「引きこもり」という言葉を聞いて多くの人は、「ずっと家の中にいて、外に出ない人」を思い浮かべるのではないだろうか? 正直なところ、私の中にもそんな印象が少なからずあった。
ところが著者によれば、それは間違いであるようだ。だとすれば、勝手なイメージと乖離した"リアルな"引きこもりの実態とはどのようなものなのだろうか?
アキラ君(仮名)は現在22歳。小さい頃から人間関係が苦手で、友人があまりいないタイプでした。大学に入って間もなく不登校になり、そのまま中退。その後何もしないまま、約3年が過ぎています。両親は働いているので、日中は家で1人。昼頃に起きて、家にあるものを食べながら、リビングでテレビなどを見ています。
両親が帰宅する夕方頃からは、自室でパソコンに向かい、ゲームをしたり動画を見たりして過ごします。廊下で親と顔を合わせて話しかけられると、普通に返事もします。家族が寝静まってから用意してある夕飯を食べて、そのまま夜中までパソコンです。バイトしてみたらと親には言われるのですが、一度も働いた経験がなく、応募する勇気も出ません。週に何度かは近所のコンビニに行き、もらっている小遣いでお菓子や飲み物を買います。たまに電車に乗って、少し遠くまで服などを買いに行くこともあります。年に2、3回は、好きなアイドルのコンサートに出かけます。(11~12ページより)
これは特殊な例ではなく、よくいる引きこもりの生活。統計上でも、引きこもりと言われている人の9割弱は、近所のコンビニ程度の外出はできているのだという。
ずっと自室から出ることがなく、親が部屋の前まで食事を運び、食べ終わったら食器を廊下に出しておく。親もそれを取りに行くだけで、何年も我が子の姿を見ていない――。
外出はできて、買い物時には店員と必要最低限の話はし、道端であった近所の人とも挨拶程度はするけれど、親しく会うような友人はいない――。
どちらも引きこもりと呼ばれる人たちのあり方だろうが、一般的には前者を思い浮かべる人が多いのではないか。しかし実際の引きこもりは、後者のタイプが大半だというのだ。さらに言えば、かつての引きこもりに見られたような暴力を振るタイプも少ない。
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