女性との握手拒否で帰化認定が無効になった ドイツ
<ドイツ帰化試験に合格したレバノン人男性が、合格証書を授与するはずだった女性公務員との握手を拒んだため、帰化申請が却下され、国籍取得が反故になったことが問題となっている...... >
2015年にドイツ帰化試験に高得点で合格したレバノン人男性が、合格証書を授与するはずだった女性公務員との握手を拒んだため、帰化申請が却下され、国籍取得が反故になった。
男性はその翌年、シュトゥットガルトの地方行政裁判所に提訴したが却下、さらに州連邦裁判所に上訴したが、今月17日ふたたび却下された。
ほぼ満点獲得も......
この40歳のレバノン人男性は、2002年にドイツに入国、ドイツ語コースと医学を修め、現在は医師として働いている。約10年前、ドイツ生まれのシリア系市民と結婚し、入国から現在までずっと合法的にドイツ国内に居住してきた。 2012年に帰化を申請し、誓約と忠誠の宣言、および基本法(Grundgesetz:いわゆる憲法)への忠誠とあらゆる形態の過激主義の拒絶に関するリーフレットに署名した。また、満点に近いポイントで帰化テストに合格していた。
ところが、証書を手渡すはずだった地区行政の責任者である女性との握手を拒んだため、帰化認定は無効となってしまった。却下の理由を説明した文書には、「性的誘惑を危惧するあまり女性との握手を拒む者は、ドイツの生活条件に適応できないことを証明している」と書かれていた。
男性は握手を拒んだ理由として、妻と、他の女性と握手はしないという約束をしていたと説明している。
握手には契約締結の意味も
ドイツでは握手は非常に大切な生活文化だ。一般企業でのミーティングのはじめと終わり、あるいは歯医者での治療のはじめと終わりなど、ありとあらゆる場面で握手をする機会がある。インフルエンザなどが流行っているときなどには「握手を控えましょう」とすることもあるが、一時的なものだ。その風習には何世紀もの歴史があり、現在パンデミックで回避傾向にあるとしても、習慣自体が立ち消えることはないと考えられている。
帰化するためには、申請者は国籍法10条に従って、ドイツの生活条件に適応できることを証明する必要がある。握手はドイツの社会的、文化的生活に深く根ざしており、性別に拘らず一般的な行為だ。これを拒絶したことで、男性は自らドイツ社会に適応できない印象を与えてしまった。
法的専門誌によると、却下の文書ではさらに、握手には契約が結ばれたことを象徴する、法的な意味もあると指摘している。このことから、女性公務員との握手を拒否したこの移民男性は、ドイツ連邦基本法に明記された平等原理に違反しているという。
帰化申請者が性的な理由で、つまり性的誘惑および不道徳な行動と見なされるという理由で握手を拒否する場合、これは性別や人種間の平等を定めたドイツ基本法第3条(2)および(3) に反し、申請者はドイツの生活条件に適合できないとみなされる。
このレバノン人男性は、女性に限らず男性でも握手はしなかったと述べているが、説得力はなかったようだ。
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