コロナ禍でプラスチック業界に激震 廃棄増がリサイクル圧迫

2020年10月10日(土)13時01分

企業のほとんどはプラスチックごみへの懸念を表明し、削減を支援している。しかしロイターの調査で、こうした取り組みへの設備投資は新プラ向け投資に比べればほんのわずかにすぎないことが分かった。

ロイターがBASFやシェブロン、ダウ、エクソンなど大手石油・化学企業12社にアンケートを行ったところ、廃プラ削減への投資額の詳細を明らかにした企業は一握りだった。3社は詳細についてコメントを避けたか、返答がなかった。

ほとんどの企業は消費財関連企業などが支援する「廃棄プラスチックをなくす国際アライアンス」を通じてこうした取り組みを行っていると説明した。約束している設備投資額は今後5年間で15億ドルだ。国際アライアンスのメンバーの47社はほとんどがプラスチック業者で、ロイターの試算によると昨年の合計売上高は2兆5000億ドルに上る。

ロイターの調査によると、国際アライアンスと石油・化学企業が約束した廃プラ対策投資は5年間で総額20億ドル余り。年間では4億ドルで、売上高に占める比率は極めて小さい。

インパックス・アセット・マネジメントの持続可能性部門の責任者、リサ・ビュービリアン氏は新プラにこれほど多額の投資が計画されていることについて「非常に心配な動きだ」と述べた。「廃棄物処理やリサイクルで制度の整備が遅れている国は、さらに廃プラが増えれば処理する体制が整わないだろう。われわれは文字通りプラスチックの中におぼれつつある」と指摘した。

世界各地のリサイクル業者によると、新型コロナ感染拡大以降、リサイクル業界は大打撃を被っており、落ち込みは欧州で20%以上、アジアの一部では50%で、米企業の一部は60%に達している。

リサイクル会社QRSのグレッグ・ジェーソン氏によると、こうした状況は10年前には想像もできなかった。米国はバージン材料の生産コストが最も低い国の1つになり、新プラの流通量が増えている。

ジェーソン氏は「パンデミックで新プラの津波が一段と大きくなった」と話した。

ロイターの調査で石油・化学企業は、プラスチックが人口増加に絡む世界的な課題解決の一端を担い得ると回答。6社は廃プラを再利用する新たな技術を開発中だとした。

また、プラスチック以外の容器や包装はプラスチックよりも温室効果ガスの排出量が多くなる可能性があるとも指摘した。プラスチックは軽く、消費者にとって不可欠で、温室効果ガスの排出削減に役立ち得るからだという。政府に廃棄物処理のインフラ整備の支援を求める声もあった。

BASFの広報担当者は「生産能力の増強でプラスチックの廃棄による公害が増えるとは限らない」と述べ、必要とされる天然資源を減らす包装用材料の開発に何年も取り組んでいるとした。

需要動向、メーカーの社運かかる

今日、発展途上国の小規模な店舗の多くがプラスチックパウチに入れた日用品を売っている。NGOの「グローバル・アライアンス・フォー・インシナレーター・オルタナティブズ」によると、フィリピンで使われるプラスチックパウチは1日当たり1億6400万枚。年間では600億枚近くだ。

ネスレやP&Gなど消費財メーカーは、リサイクルやリユースが可能な包装の製造に努めている、としている。例えばP&Gはマニラの学校で100万枚のパウチを集めて、元の製品よりも価値の高いモノを生み出す「アップサイクル」を行うプロジェクトに取り組んでいる。

しかしプラスチックパウチはリサイクルが非常に難しい。コロナ禍が生んだ新たな環境汚染の要因の1つであり、配水管の詰まりや水質汚染を引き起こし、海洋生物を窒息させ、ネズミや疾病の媒介となる昆虫を引き寄せる。

素材の一部にプラスチックが使われるマスクも、環境汚染の要因だ。公式統計によると、中国の3月のマスク消費は1億1600万枚で、2月の12倍に急増した。コンサルタント会社iiメディア・リサーチのリポートによると、中国の2020年のマスク製造は全体で1000億枚を超える見通し。コンサルタント会社フロスト・アンド・サリバンによると、米国は新型コロナ感染のピーク時の2カ月に出た医療廃棄物が金額ベースで1年間相当に達した。

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