28歳妊婦まで犠牲に... ロックダウン緩和で「フェミサイド」急増の南アフリカ
<犯罪率が飛び切り高い南アフリカで、パンデミックに起因する高失業率と経済格差から家庭内暴力がいっそう深刻化している>
6月11日、28歳の女性ツェゴファツォ・プレのひつぎの周囲にマスク姿の人々が集まっていた。妊娠8カ月だったプレは南アフリカ最大の都市ヨハネスブルクの郊外で、胸を刃物で刺され、木につるされた状態で発見された。
犠牲者はプレだけではない。南アフリカでは、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)を受けて6月1日に始まったロックダウン(都市封鎖)が徐々に緩和された後、フェミサイド(パートナーなどによる女性を標的とする殺人)やその他のジェンダーに基づく暴力と殺人(GBVF)が増えている。
女性に対する暴力は以前から深刻な社会問題ではあったが、コロナ禍の中で続発する事件に国中の怒りが爆発。ハッシュタグ「#StopKillingWomen 」がSNS上でトレンドとなり、何千人ものユーザーが女性に対する暴力の増加を非難した。
ラマポーザ大統領はテレビ演説で、最近数週間で21人の女性と子供が殺害されたと指摘(注目を集めた事件の犠牲者のみ。実際の数字はもっと多い可能性が高い)。GBVFを「もう1つのパンデミック」と表現した。
南アフリカは女性に対する暴力の発生率が世界で最も高い国の1つ。3時間に1人の頻度で女性が殺害されているという報告もある。
最新の犯罪統計によると、2018~19年に警察が把握した女性に対する犯罪は17万8000件近い。そのうち8万2728件が暴行事件だ。女性の殺人事件は2771件、殺人未遂も3445件あった。警察には性暴力の報告が2019年だけで8万7000件寄せられている。
南アフリカの男性は女性を劣った存在と見なす傾向が強い。犯罪率が飛び切り高いこの国で、女性たちは社会的不平等だけでなく、身の危険にもさらされている。
特にパンデミック後は、高失業率と経済格差を背景とする家庭内暴力が深刻化している。警察によると、9週間の酒類販売禁止措置の終了と共に女性や子供に対する犯罪や暴力が急増したという。野党の「経済自由の戦士(EFF)」は、女性たちを守れない政府を批判している。同党の議員ムブイセニ・ヌドロジはプレの葬儀でこう言った。
「私たちが互いに1メートル離れていることを確認しようと、大勢の警官が来ている。銃を持って、50人以上も。しかし、(プレが殺されたとき)彼らはどこにいたのか? 死を悼む場に彼らは必要ない。死の悲しみを止めるために彼らが必要なのだ」
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