手に乗る大きさのゾウの仲間、約50年ぶりにアフリカ東部で見つかる
<1973年以降、生息が確認されておらず、保存標本39体のみが世界の博物館で収蔵されていた「ソマリハネジネズミ」がアフリカ北東部ジブチで確認された...... >
分類学上、ゾウやツチブタ、マナティーと同様に、アフリカ獣上目に属する「ハネジネズミ(跳地鼠)」は、ネズミほどの大きさで、長く伸びた鼻を用いて主に昆虫を食べる。
アフリカ大陸東部「アフリカの角」を生息地とするハネジネズミの一種「ソマリハネジネズミ」は、1973年以降、生息が確認されておらず、保存標本39体のみが世界の博物館で収蔵されている。
米野生生物保護団体「グローバル・ワイルドライフ・コンサベーション(GWC)」では、ソマリハネジネズミを「最重要探索対象消失種」のひとつに指定してきた。
約50年ぶりにアフリカ北東部ジブチで確認
しかしこのほど、約50年ぶりに、ソマリハネジネズミがアフリカ北東部ジブチで確認された。一連の研究成果は、2020年8月18日、オープンアクセスジャーナル「ピアジェイ」で公開されている。
米デューク大学キツネザルセンターのスティーブン・ヘリテージ研究員らの共同研究チームは、ジブチでの地域住民への聞き取り調査などから、ソマリハネジネズミが現在もジブチに生息しているのではないかと考え、2019年2月1日から15日間にわたって、現地調査を実施した。
ジブチの12のエリアで計1259個のワナをしかけ、無糖ピーナツバターとオートミール、酵母エキスを混ぜた餌でおびき寄せたところ、アフリカトゲネズミ263匹、スナネズミ17匹とともに、8匹のソマリハネジネズミを捕捉した。このほか、3匹がジブチ南部アサモと南東部アルタで見つかり、中部のフォレ・ドゥ・ダイ国立公園では1匹の撮影に成功している。
ソマリアやエチオピアにも生息する?
現地調査で確認された計12匹のソマリハネジネズミはいずれも岩場や乾燥帯で生息していた。これらの地域は、開発や農業といった人間活動に適さず、その脅威にさらされづらかったとみられる。研究チームでは、ソマリハネジネズミの生息地が、ジブチだけでなく、隣国のソマリアやエチオピアにわたって広範囲に及ぶのではないかと考察している。
ソマリハネジネズミは、現在、国際自然保護連合(IUCN)の「IUCN絶滅危惧種レッドリスト」で、「その保全状況を適切に査定するためのデータが充分でない」とする「データ不足」に分類されているが、研究チームは、今回の研究成果をふまえて評価を見直し、「低危険種」(絶滅のおそれがなく、近い将来絶滅に瀕する見込みが低い種)に分類するべきだと説いている。
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