ベーシックインカムはどうだったのか? フィンランド政府が最終報告書を公表
<フィンランド政府は、2017年から2018年にかけてベーシックインカムの社会実験を行い、このほど一連の研究成果をまとめた最終報告書を公表した......>
ベーシックインカム(UBI:基礎所得保障)とは、政府がすべての国民に対して最低限の生活を送るのに必要となる金銭を定期的に支給するという政策である。
フィンランド政府は、2017年から2018年にかけてベーシックインカムの社会実験を行い、2020年5月6日、一連の研究成果をまとめた最終報告書を公表した。
失業手当受給者を対照群に心身の健康、幸福度などを分析
この実験では、2016年11月時点での失業手当受給者のうち、無作為に抽出した25歳から58歳までの2000名を対象に、2017年1月から2018年12月までの2年間にわたって毎月560ユーロ(約6万5520円)を支給した。なお、この期間中、就職や起業で収入を得ても、この支給額が減らされることはない。このため、低収入の仕事でも仕事に就くことができ、失業率が低くなると考えられていた。
研究チームは、同期間の失業手当受給者を対照群として、ベーシックインカムが受給者の雇用や収入、社会保障、心身の健康、幸福度、生活への満足度などに、どのような影響をもたらしたかを分析した。
実験期間終了直後に実施したアンケート調査によると、ベーシックインカムの受給者のほうが、生活への満足度が高く、精神的なストレスを抱えている割合が少なかった。また、他者や社会組織への信頼度がより高く、自分の将来にもより高い自信を示した。
ベーシックインカムの受給者81名を対象にインタビュー調査も実施した。これによると、その多くが「ベーシックインカムが自律性を高めた」と回答。ベーシックインカムによって、経済状況を自らコントロールしやすくなり、経済的に守られていると感じるようになったとみられる。ベーシックインカムが、ボランティア活動など、新たな社会参加を促すケースもあった。
ベーシックインカムが雇用にもたらす影響は小さかった
ベーシックインカムが雇用にもたらす影響は限定的だった。2017年11月から2018年10月までの平均就業日数はベーシックインカムの受給者のほうがわずかに多く78日であったのに対し、失業手当受給者では73日であった。フィンランド経済研究所(VATT)の主任研究員カーリ・ハマライネン氏は「ベーシックインカムが雇用にもたらす影響は小さかった」と述べている。
ただし、フィンランドでは、実験期間中の2018年1月に失業手当の給付要件を厳格化する「アクティベーション・モデル」が導入されたため、今回の社会実験では、ベーシックインカムが雇用にもたらした影響のみを検証することは難しい。
フィンランド国民は、ベーシックインカムの導入に前向きな姿勢を示している。国民アンケートでは、フィンランドでのベーシックインカムの導入について、回答者の46%が「賛成」もしくは「部分的に賛成」と回答している。
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