「仮面の笑顔」中国・習近平の本音

2019年10月4日(金)14時30分
阿南友亮(東北大学法学研究科教授)

米政府は2017年末に協調を前提とした従来の対中「関与」政策が誤りであったという見解を示し、対中外交を大幅に見直すと宣言した。それ以来、米政府は中国が構造改革に真摯に取り組まない限り対抗措置を講じるというスタンスを堅持してきた。一方、アメリカが中国に求めている構造改革は、共産党の既得権益に抵触するため、共産党はアメリカの要求に反発しつつ、2018年以降、日本に対する友好攻勢を強めた。

日本政府は、米政府の対中政策とは一定の距離を置いており、「協調」というキーワードを前面に掲げつつ、中国との関係改善の可能性を探っている。安倍首相は、2006年に胡錦濤政権下の中国との関係を一時的に改善させたという成功体験を持っているが、現在の習近平政権は胡錦濤の改革に対するアンチテーゼとして誕生したため、2006年の再現は容易ではない。

習近平政権の下で進行した改革開放のパラダイムチェンジを日本の政府と経済界はどのように査定するのか。その見極め作業は、日本という国の在り方を根底から問う試金石になる。

(筆者の専門は中国近現代史、現代中国政治、日中関係論。2018年に『中国はなぜ軍拡を続けるのか』〔新潮選書〕でサントリー学芸賞受賞)

<本誌2019年10月1日号掲載>

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