「地球平面説」が笑いごとではない理由

2019年7月3日(水)11時15分
リー・マッキンタイヤ(ボストン大学哲学・科学史センター研究員)

世間一般でどれほど支持を得られているかという点では、フラットアース派は地球温暖化否定論者やワクチン反対派をかなり下回る。しかし、彼らの思考回路は驚くほど似ている。その意味で、FEICは、科学否定論者全般の考え方を理解し、対抗方法を見つけるいい機会になりそうだ。

キリスト教原理主義と陰謀論

NASAの月面探査もでっち上げか JSC/NASA

まず、はっきりさせておくべきなのは、フラットアース論者は大真面目だということだ。当然だろう。21世紀の今、「地球は平面だ」などと言えば嘲笑される可能性があることは、本人たちも覚悟の上だ。また、ほとんどのフラットアース論者は、以前は地球は丸いと思っていた。だがある日、「真実に目が覚め」て、自分をだまそうとする世界的な陰謀に気が付いたと言う。その口ぶりは、まるで宗教的な経験を語っているかのようだ。

とはいえ、「地球は平面だ」と言った瞬間に多くの疑問が生じる。具体的にどんな形状なのか(円盤状で「南極山脈」が周縁に広がっている)、誰がその「真実」を隠しているのか(政府、NASA、パイロット......)などだ。

私はFEICに2日間参加し、「科学的方法によるフラットアース論」「NASAその他の宇宙に関する嘘の数々」といったセミナーに出席した。

1日目は黙って彼らの主張を聞いた。参加者のバッジを着け、ひたすらメモを取るのみ。そして2日目にようやく口を開き、言うべきことを言った。

やりとりを重ねるうちに見えてきた。フラットアース説はキリスト教原理主義と陰謀論の奇妙なミックスで、一部の人々にとってそれは信仰のようなものなのだ。

プレゼンはほぼ全て地球は丸いという説の「虚偽性」を裏付けるか、平面説の正しさを示す「科学的な証拠」を並べ立てるもので、突っ込みどころだらけのご都合主義的な議論に終始した。

まともに反論してもダメだと思った。どんな証拠を突き付けても、彼らは聞く耳を持たない。いわくNASAの衛星画像は捏造だ、回転する球体の上に海なんかあるわけがない......。

そこで違う戦術を取ることにした。証拠について議論するのではなく、彼らの論理展開の弱点を突くのだ。

陰謀論者は懐疑派を気取っているが、実はとてもだまされやすい人たちだ。証拠に対する彼らの態度はダブルスターンダードそのもの。自分たちが信じたくないことを示す証拠はどんなに確かな証拠でも不十分とされ、信じたいことを示す証拠はどんなにあやふやでも確証となる。「科学的な態度」はこれとは正反対だ。自説に固執せず、新たな証拠が出てくれば、検証し直す。

これが私の強みになる。

彼らに「証拠を見せろ」と迫れば、彼らは喜んで差し出すだろう。逆に「これが私の証拠だ」と突き付けても、却下されるだけだ。そうではなく、彼らに聞いてみることにした。どんな証拠があれば、自分の間違いを認めるのか、と。この質問は彼らの意表を突いたようだった。

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