50代の半数はもう手遅れか──生活水準を維持可能な資産水準を年収別に推計する
では、10%以上も生活水準を低下せざるを得ない世帯はどうすればよいのだろうか。選択肢として考えられるのが、退職後もリスクのある資産へ投資することにより資産の増加を目指すことである。
仮に、退職後、全世帯が年率1.5%で運用できる場合、10%以上も生活水準を低下せざるを得ない世帯の割合は、50代全体で46%から39%に低下する。しかし、退職後の消費支出に占める公的年金の割合が高く、運用にあてられる資産額が少ない低所得世帯における効果は限定的である(図表6)。
この他に、(1)より長く働き続けることや、(2)貯蓄率を上げることが考えられる。しかし、貯蓄率をあげることは、年間収入の上昇が期待しにくい50代にとっては、早期に生活水準を低下させることに他ならない。また、(3)リバース・モーゲージの活用も考えられる。10%以上も生活水準を低下せざるを得ない世帯は、借入金残高が多い傾向がある。また、退職金を受け取った人の2割が、退職金を住宅ローンの返済に充てているという調査結果もある(11)。退職金を住宅ローンの返済に充てず、リバース・モーゲージに借り替えることで、生活水準の低下を防げる可能性がある。最後に、(4)10%以上も生活水準を低下せざるを得ない世帯が長寿年金等により互いに助け合うことである。老後のために用意すべき資産額は、資産が死亡時までに枯渇する確率が5%となる資産額と一致するように算出している。人生100年時代とはいえ、全員が100歳まで生きるわけではないのだから、長生きリスクをシェアすることができれば、生活水準の低下を防げる可能性がある。
今後は、上記4つの方法やその他様々な方法により、10%以上も生活水準を低下せざるを得ない世帯の割合をどれくらい減少させることが可能なのか、定量的に評価、確認していきたい。
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11 脚注1と同じ
*この記事は、ニッセイ基礎研究所レポートからの転載です。
高岡 和佳子
ニッセイ基礎研究所
金融研究部主任研究員・年金総合リサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任
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