50代の半数はもう手遅れか──生活水準を維持可能な資産水準を年収別に推計する
<老後の備えに必要な資産は一般に2,000万円~3,000万円とされるが、その額は退職前の年収にも左右される。皮肉なことに、年収500万円だった人は資産2,000万円でも生活水準を保てるが、年収1,000万円だった夫婦の場合、半数は老後の生活水準の大幅な低下が避けられないことがわかった>
老後のために、資産をどの程度用意すればよいのか。一般的に、夫婦二人の老後に必要な資金は2,000万円~3,000万円が目安とされる。実際、2,000万円~3,000万円の資産を有す高齢者の約半数が現在の生活で満足しているといった調査結果がある。
しかし、2,000万円~3,000万円もの資産があっても、半数は満足できる生活ができていないとも言える。これは、退職後の可処分所得や満足できる生活水準が、世帯により大きく異なるからではないだろうか。
退職後の可処分所得や満足できる生活水準は退職前の年間収入の状況に因ると考えられることから、50代のサラリーマン夫と専業主婦の二人世帯を対象に、老後の生活のために用意すべき金額を年間収入別に推計した。推計結果などから、50代世帯の半数は、老後の生活水準の大幅な低下が避けられない状況にあることがわかった。
1──老後のための必要資産額は人それぞれ
老後のために、資産をどの程度用意すればよいのか。一般的に、夫婦二人の老後に必要な資金は2,000万円~3,000万円が目安とされる。実際、2,000万円~3,000万円の資産を有す高齢者の約半数が現在の生活で満足しているといった調査結果がある(1)。約半数が満足できる生活をしているのだから、2,000万円~3,000万円という水準は目安としては正しいと言えるだろう。
しかし、2,000万円~3,000万円もの資産があっても、半数は満足できる生活ができていないとも言える。これは、退職後の可処分所得や満足できる生活水準が、世帯により大きく異なるからではないだろうか。
ボストンカレッジの退職研究センター(Center for Retirement Research at Boston College)は、退職後の生活水準低下をリタイアメント・リスクと定義し、定期的に退職後の生活水準が低下する世帯の割合を公表している。当然、退職前の生活水準はその時点での世帯収入に依存し(図表1)、年間収入が1,500万円以上の勤労者世帯と200万円未満の勤労者世帯とでは、月額消費支出におよそ4倍の差がある。生活水準の低下をリスクと捉えるならば、退職後に望む生活水準も退職前の年間収入の状況に依存すると考えられる。
そこで、退職までの期間が短く、将来の不確実性要素が相対的に少ない50代のサラリーマン夫と専業主婦の二人世帯を対象に、老後の生活のために用意すべき金額を年間収入別に推計する。併せて、資産の準備状況別にどの程度生活水準が低下しうるのかを示す。最後に、退職後の生活水準低下が懸念される世帯の割合を推計する。
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1 野尻哲史「高齢者の金融リテラシー~生活に不安を抱えながらも資産の持続力に楽観的~」フィデリティ退職・投資教育研究所
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