「アフリカの北朝鮮」エリトリアに門戸開放の兆し
<隣国エチオピアとの関係改善でエリトリアの世界遺産に観光客を呼び込めるか>
東アフリカの小国エリトリア。「アフリカの角」と呼ばれる地域の北部に位置し、南隣のエチオピアとは98~00年の国境紛争以降、緊張状態が続いていた。だが、今年4月に就任したエチオピアのアビー首相の主導で関係改善の動きが活発化し始めた。
7月8~9日にアビー首相がエリトリアを訪問。両国は戦争状態の終結を盛り込んだ合意文書に調印した。さらに14日にはエリトリアのイサイアス大統領がエチオピアを訪れ、長年の対立にようやく終止符が打たれた。
エリトリアは秘密のベールに覆われた国だ。エチオピアから正式に独立した93年以降、独立戦争の英雄と奉られるイサイアスが大統領の座に居座り続け、独裁色を強めてきた。
ヨーロッパに大量に流入する難民の多くはシリア人だが、それに次いで多いのはエリトリア人だ。その背景には、「アフリカの北朝鮮」とも呼ばれる国内の過酷な現実がある。イサイアスの強権支配下で恣意的な逮捕や拷問がまかり通り、国民は奴隷状態に置かれていると、人権擁護団体は訴えている。
言論と報道の自由はないに等しく、国境なき記者団による「報道の自由度ランキング」では毎回、北朝鮮と最下位の座を争うレベルだ。
一方で、この国には豊かな観光資源がある。首都アスマラは標高2300メートルの高地に位置し、イタリアの植民地時代に建設されたアールデコや未来派の建物が立ち並ぶ。「アフリカに出現したモダニズム都市」とも言うべき独特の景観が評価され、昨年ユネスコ(国連教育科学文化機関)の世界遺産に登録された。
このままエチオピアとの関係改善が進めば、観光客を誘致できるだろうか。多くの国々はエリトリアへの渡航を制限しているが、国境地帯に平和が訪れれば、制限は緩和されるだろう。エリトリア大使館がある国なら、観光ビザの取得は比較的簡単だ。
旅心を誘う名所が多い
しかしこの国に4回訪れた経験がある国際人権擁護団体アムネスティ・インターナショナルのスタッフによると、入国審査には手間取りそうだ。「エリトリア政府は外国からの影響を異常に警戒するため、入国理由などをしつこく聞かれる」
よそ者を警戒するのも無理はない。紅海を挟んでサウジアラビア、イエメンと向かい合うエリトリアは、イタリア、イギリス、そしてエチオピアに占領された歴史を持つ。
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