米イラン制裁で世界最大級のガス田が中国の手に?
<トランプ政権の対イラン制裁再発動は、中国にとってはエネルギー資源確保の好機になる>
フランスの天然ガス石油大手トタルが、アメリカの制裁を恐れてイラン南部沖合のガス田サウスパルスの開発プロジェクトから撤退するなら、トタルの事業権益は中国に譲渡する──イラン当局が脅しともとれる声明を発表した。
トタルは米政府の対イラン制裁再発動を睨んで、イランにおける開発プロジェクトからの撤退を検討している。
2015年にイランと欧米など6カ国が交わした核合意で、イランに対する経済制裁が解除されたことを受けて、トタルは世界最大級のガス田で事業規模48億ドルのサウスパルス第11鉱区の開発プロジェクトへの投資を決め、中国最大の国有石油ガス会社・中国石油天然気集団(CNPC)と共に2017年7月、イランの国営石油会社と契約を交わした。
ところがドナルド・トランプ米大統領が5月8日、核合意からの離脱を表明。制裁の再開を命じる大統領令にも署名した。これにより、一定の猶予期間後はイランと取引する外国企業にも米政府の「二次制裁」が科されることになった。
英紙フィナンシャル・タイムズが伝えた声明で、イランのビージャン・ザンギャネ石油相は、トタルが撤退するなら、既に30%の権益を持つCNPCがトタルの権益50.1%を取得することになると述べた。
「トタルはイランにとどまるため60日間アメリカ政府と交渉できる。フランス政府も同期間交渉できる。アメリカ政府がトタルの残留を認めなければ、中国がトタルに取って代わることになる」
中国企業は二次制裁が怖くない
ロイターが入手した声明でトタルの広報担当者は、「5月16日に発表したように、イラン当局と交わした契約に従い、トタルはプロジェクトの権利放棄が可能かどうか、フランス及びアメリカ当局と協議している」と述べている。
「第11鉱区の契約では、制裁が発動された場合に備えて、しかるべき手続きと時期が定めてあり、わが社はその手続きを進めている」
トタルは金融取引の90%を米銀が占めるため、二次制裁が科されれば、大きな痛手を被る。
一方、CNPCをはじめ中国の企業は、ヨーロッパの企業と比べ「アメリカとのつながり、特にウォール街とのつながりが少ないため、米政府の制裁によるリスクは低いとみているだろう」と、制裁絡みの訴訟専門の弁護士ティモシー・オトゥールはフィナンシャル・タイムズに語っている。
中国外務省は28日、中国の習近平(シー・チンピン)国家主席が6月9、10日に山東省青島で開かれる上海協力機構の首脳会議にオブザーバーとして参加するよう、イランのハッサン・ロウハニ大統領を招いたと発表した。アメリカ抜きの核合意を維持するため、両国はここ数週間活発に外交交渉を行っている。
エネルギー資源の確保を至上命題とする中国は、天然ガスの埋蔵量で世界第2位のイランに多額の投資を行う一方で、第1位の埋蔵量を誇るロシアとも経済関係を深め、特にエネルギー開発で強固な関係を築いている。
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