ロヒンギャが「次のパレスチナ人」になる日
ロヒンギャ問題に関する抗議行動がいくつものイスラム教国で起きていること自体、宗派を超える問題であることを示している。ロシア南部チェチェン共和国の首都グロズヌイでは、ロヒンギャとの団結を示すため数万のイスラム教徒が抗議行動を行った。テルアビブやジャカルタのミャンマー大使館前でも、大勢のイスラム教徒がデモを行っている。
世界中のイスラム教徒がロヒンギャの問題に心を痛めている一方で、イスラム教の宗教指導者や国家指導者の対応は十分とは言い難い。アラブ連盟も、イスラム諸国の国際機関であるイスラム協力機構も、緊急の会合を開いていない。
反応が全くないわけではない。イラン議会のアリ・モタハリ第2副議長はイスラム教国に対し、イスラム教徒主導の派遣軍を立ち上げ、ロヒンギャを救済するよう呼び掛けた。イランと対立するサウジアラビアは、「ウンマの指導者を自任する国として、残虐行為と人権侵害を非難する決議の採択を呼び掛けた」と、ツイッターで発信した。
だがこうした反応は、イスラム諸国の団結と同時に分断を示している。イスラムの各勢力が主導権をめぐって対立するなか、ミャンマーでの人道活動が過度に政治問題化されている。
トルコ政府当局者は、レジェップ・タイップ・エルドアン大統領がミャンマーの国家顧問アウンサンスーチーと暴力について議論したという。トルコ当局はこの問題が国際的に、特に「イスラム世界」で懸念を集めているとしている。
サウジアラビア政府は、実際に国連安全保障理事会に働き掛けた。しかし批判派は、サウジアラビアがミャンマーと政治や経済面で深いつながりがあるために、ロヒンギャ問題に積極策を取っていないとみている。
クリスチャン・サイエンス・モニターは「サウジアラビアはミャンマーの石油インフラに数百万ドルを投資しており、ミャンマーを通る石油パイラインを使って中国に石油を提供し続けるつもりだ」と報じている。
実際には、サウジアラビアはロヒンギャへの支援策を強化している。サウジアラビアは近年、ミャンマーからイスラム教徒25万人を受け入れており、住居や教育、医療や雇用を無償で提供している。
ロヒンギャ問題が人々の感情に訴える理由の1つは、報道が偏向していると考えられていることだ。テロとして報じるのは犯人がイスラム教徒の場合だけと見なすイスラム教徒もいる。
米ジョージア州立大学のエリン・カーンズ率いるチームの調査でも、同様の結果が示された。調査によれば、暴力の加害者がイスラム教徒の場合のメディア報道は、加害者がイスラム教徒ではない場合に比べて約4.5倍に及んでいる。カーンズに言わせれば「イスラム教徒ではない加害者が同程度の注目を集めたければ、もう7人くらい殺さなくてはいけない」ことになる。
「パレスチナ人はテロリスト」という短絡的な見方も一般的だ。ロヒンギャの場合、ミャンマーは被害者のはずの彼らを「ベンガル人テロリスト」と、加害者として表現している。