米駆逐艦「マケイン」衝突事故、サイバー攻撃の疑いで捜査
<もしマケインのサイバー防御が突破されたのだとしたら、海上戦の意味は根本から変わってしまう>
米海軍は8月21日にイージス駆逐艦「ジョン・S・マケイン」(以下、マケイン)がシンガポール沖で民間タンカーと衝突した事故原因について、サイバー攻撃だった可能性を捜査している。ジャン・タイ米海軍情報戦担当副司令官が9月14日、明らかにした。
米海軍は、マケインの衝突前にハッカーがコンピューターシステムに侵入した可能性を含め、事故原因の究明に全力を挙げている。
一方、マケインの事故の2カ月前の6月17日に伊豆半島沖で民間のコンテナ船と衝突したイージス艦「フィッツジェラルド」については、サイバー攻撃の可能性はないと捜査関係者は見ているという。
「非常な短期間に2つの衝突事故が相次いだことで、サイバー攻撃を疑う見方が急浮上した」とタイは言った。どちらの事故でもサイバー攻撃を示す証拠は見つかっていないが、米海軍はワシントンを拠点にするサイバー軍の捜査チームをマケインが停泊するシンガポールの海軍基地に派遣し、サイバー攻撃の可能性を捜査させている。
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米海軍が海外にサイバー軍を派遣するのは今回が初めて。将来の事故捜査ではサイバー攻撃の可能性を探るのが当たり前の手順になるだろうと、タイは言った。
海軍のメンツは丸潰れ
2つの衝突事故では乗組員17人が死亡し、米海軍のメンツは潰れた。米海軍制服組トップのジョン・リチャードソン作戦部長は、マケインの事故直後、世界に展開する全艦隊に「運用停止」を命じ、安全手順の見直しを求めた。
サイバー攻撃がマケインの衝突事故を引き起こしたという意見は、まだ憶測に過ぎない。だが米情報機関は近年、デジタル技術を駆使した攻撃は、米海軍の艦隊に重大な損害を与える恐れがあると警告していた。米海軍は2014~2023会計年度で、サイバー防衛力向上のための予算をすでに15億ドル確保したと、タイは言った。
フィッツジェラルドとマケインは、どちらも弾道ミサイル防衛に対応できるアーレイ・バーク級のミサイル駆逐艦で、高性能センサーや迎撃ミサイルなどの高度な「イージスシステム」を装備しており、米海軍が保有する最高性能の艦船の代表だ。だが、それらの艦船を配備する米太平洋艦隊が相次いで衝突事故を起こしたため、アジア太平洋地域で重大な事態が起きた場合の米海軍の即応力を不安視する声が上がっている。同地域では、北朝鮮がミサイル発射実験を繰り返し、中国も南シナ海で領有権を主張し軍事拠点化を進めるなど不穏な動きが多く、情勢が緊迫化しているからだ。
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