イランはトランプが言うほど敵ではない

2017年5月26日(金)18時36分
フーマン・マジド

イランの人権侵害は一夜にして解決しないし、首都テヘラン北西のエビン刑務所や自宅軟禁下にある政治犯が突然解放されることもない。政治的な自由をもっと認め、社会的制約を取り除き、表現の自由を保障してほしいと切望した若者に対して、ロウハニは改善を約束した。だが民主化改革は大統領の一存ではできず、いつも専門家会議の合意という壁にぶつかってきた。ロウハニは国民の自由拡大に理解を示し、ダンスの動画を投稿した程度の行為で逮捕しないよう訴え、実際に司法当局を批判したこともある。だが、今後も保守強硬派の抵抗は避けられないだろう。

ロウハニは再選により、1期目に当選した2013年より強い求心力を手にした。彼は保守派として政界入りした後に穏健派へと転じ、核開発をめぐる欧米との対立を見事な外交手腕でくぐりぬけ、さらに大統領選終盤の2週間で一気にリベラルな改革者へと変身した。ロウハニはイラン核合意の維持に腐心して民主化改革を棚上げした1期目と違い、今後は不公平な制度の是正に本腰を入れられる。

ただし彼1人でやるのではない。ロウハニに批判的なイラン国内の保守強硬派以外で、彼の政策実行力に最も大きな影響を与える勢力といえば、もちろんアメリカだ。

トランプの大統領就任から4カ月以上経ったが、いまだに具体的な対イラン政策は見えない。レックス・ティラーソン米国務長官は、アメリカの国益になるか否かを見極めるために核合意を「見直す」可能性に言及した。イラン政府は見直すこと自体がアメリカによる合意違反に他ならないと反発している。

トランプが外遊先のサウジアラビアやエルサレムで各国首脳からどれほどイランの悪口を聞かされたにせよ、イランの協力なしに中東地域で和平やテロの撲滅は不可能だ。アメリカが有効な外交政策を打ち出すには、数千万人のイランの有権者の選択は無視できない。

イラン国民が選んだのは、欧米との対立でも戦争でもない。歩み寄りや平和的共存を求め、開かれた国になるために票を託したのだ。アメリカがどんな対イラン政策や中東政策を打ち出すにしても、確実なのは、イラン国民が自国を大事に思い、自分たちの声が政治に反映されることを望み、ロウハニが世界との関係を深めることを歓迎していくだろうということ。

そんなイランに対して、アメリカはいつまで喧嘩腰を続けるのか。

(翻訳:河原里香)

From Foreign Policy Magazine

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