エクアドル大統領選に「介入」したアサンジの迷走

2017年4月4日(火)17時10分
山田敏弘(ジャーナリスト)

例えば2月初め、ウィキリークスが以前内部告発で手に入れた米外交公電の中に、ラソが米政府の情報提供者だったとされる記述があるとして、それをわざわざ選挙に合わせてツイートしている。しかも文書に蛍光ペンでラインを引いて、画像もアップした。

また選挙当日も、ラソの顔写真とともに「今日のエクアドルの大統領選に、パナマのオフショア銀行スキャンダルが」というツイートをした。確かにラソはパナマにいくつもの会社を所有していたことが判明しているが、現在のところ違法性があるかどうかは分かっていない。しかし、少なくともラソのイメージにマイナスになったことは間違いないだろう。

こうして、ラソの足を引っ張るようなツイートを続けたことで、ウィキリークスは明らかにエクアドル大統領選に介入した。しかもラソを貶めようとする意図は明らかで、「内部告発」の完全な私物化だ。

大統領選への介入と言えば、最近世界で大きな話題になったケースがある。アメリカの大統領選だ。

【参考記事】オランダ極右党首に巨額献金する「トランプ一派」の思惑とは

トランプ勝利に協力?

ロシアの諜報機関に指示を受けたハッカー集団が、民主党や共和党のネットワークに侵入し、選挙に不正に介入したとして、今では捜査の対象になっている。

この問題でも、ウィキリークスは民主党の内部情報を次々と暴露することで、結果的にドナルド・トランプの選挙戦を助け、トランプ大統領の誕生を望んで動いていたロシアに「協力」したと批判された。

アサンジは、ロシアが盗んだ情報を「内部告発」として暴露したことで、今ではロシアの手先だとまで言われるようになっている。さらに今回のエクアドル大統領選で、自分に好意的な候補者を支援するために内部告発を使ったのだから、迷走していると批判されても仕方がない。

もちろん、そもそもウィキリーク自体がそんな崇高なものではない、という指摘はあった。ただ物議を醸しながらも、外交公電のように公益性の高い情報を提供してきたことは事実だ。

もしウィキリークスが、アサンジの私的な目的を達成するための「道具」になりつつあるとしたら、それはアサンジを支援してきた人たちへの裏切りでもある。

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