良かれと思ったレイプ防止策、逆に女性への攻撃性を高めることに
<大学の防止プログラムで逆に攻撃的になる男性も>
アメリカの大学では近年、レイプ事件が多発している。そのため今では政府の補助金を受けている大学は、レイプ防止と啓発を目的としたプログラムの実施が法律で定められている。
しかし、こうしたプログラムの効果を確認することを義務付ける法律はなく、評価はほとんど行われていない。
暴力行為に関する学術誌「アグレッション・アンド・バイオレント・ビヘイビア」に発表された新しい研究によれば、大学のレイプ防止プログラムは、逆に問題を悪化させる恐れがある。
この研究でカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)のニール・マラムス教授(心理学)らは、性暴力を起こす危険性が高い若者を対象とするプログラムは、女性への攻撃性を高める「敵対的な反応」を生む可能性があると結論付けている。
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望む女性と性交渉をする「権利」があると思っている男
マラムスのチームは、このテーマに関する先行研究を精査した。そこで分かったのは、こうしたプログラムが有効だった事例はごく少数であるということだ。「数は少ないが、分析した過去の論文のデータによれば、暴力的な男性に対して広く使われている心理的介入手法が、意図とは逆の結果をもたらすことに驚いた」と、マラムスは心理学ニュースサイト「サイポスト」に語った。
例えば15年のある研究では、性差別的な態度が強い男性は、男女の平等を促進するメッセージを読んだ後、女性に対してさらに攻撃的になったことが分かっている。
マラムスらはこれを「ブーメラン効果」として知られる心理学的現象に分類。「人は自由を脅かされるとそれに反発し、外部からの強制と反対の方向に動くことで、自律性を主張する」と論じている。
つまり性的な攻撃性を持つ男性は、男女平等や暴力防止のメッセージに逆らう行動を取る可能性がある。彼らは、自分には望む女性と性交渉をする「権利」があると思っているためだ。
マラムスは今回の調査結果を、より効果的なレイプ防止プログラムの開発に役立てられるだろうと言う。「大学に入学する年齢に達するずっと前に、よりよい防止策を講じることを検討すべきだ。もっと若いうちでなければ、効果は上がらないかもしれない」
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