日本の科学者は「給料安い」「ポンコツ多い」(一流科学者・覆面座談会)

2020年10月16日(金)17時40分
ニューズウィーク日本版編集部

ダーウィン まず自分を雇えない。

エジソン そこはポイントですね。アメリカの教授は大学からのお金もあるが、外から取ってきたお金で自分に給料を払い研究費にも使う。そしてポスドクや学生にも給料と授業料を払う。逆に言うと仕事してもらわなきゃいけないからクビも切れる。

ニュートン イギリスも似た感じですね。だから学生にも成果に対するプレッシャーがある程度ある。

海外とのすさまじい格差

ダーウィン アメリカの一流大には世界中から優秀な人が来る。多くは就業経験、社会人経験があり、もっと深いことやりたい、もっとお金が欲しい、良いポジションに就きたい、という思いで良い大学の博士号を取りに来る。そういう人たちが基本的に「仕事」として最低限のお金をもらって研究する。だから日本と心構えがまず違う。必死で働く。

ニュートン 博士号を取れば、その先にベターな職環境に行けるという確信と現実がありますよね。日本は博士号を取ったことのデメリットが強調される。社会が受け皿として博士の高度な専門性を利用せず、博士課程に行くハードルを高くしている。

ダーウィン アメリカのいい大学を学部や修士で出てグーグルやフェイスブックに入ると、初年度からもろもろ込みで年収1500万円ぐらい。博士課程を終えてからだと3000万は欲しいよね、という感じ。それもあり博士号を目指す人が大勢いる。

ニュートン 私は教員6年目だが、給料1500万円なんてあり得ない(笑)。私がイギリスにいたときのポスドクへの最高支給額は年間1100万円ぐらいで、それは欧州委員会が世界中から研究者を集めるための奨学金システムから出ていた。ドイツやイギリスの似たようなプログラムでも700~800万円はもらえる。

一方、日本の日本学術振興会の海外特別研究員という制度は450~600万円ぐらい(渡航地域の物価による)。更に酷いのは(海外ポスドクは所得税を引かれない場合もあり)海外ポスドクより帰国して教員になる方が給料が減ること! 日本では博士号のブランドがあまりに低過ぎて、興味のため多くを捨て、「夢のために頑張る」という自己犠牲に耐え得る人ばかりになってしまった。

日本の博士はポンコツか

ガリレオ おっしゃる通りで、あまりに海外と日本は違うのでどうしたらいいか、なかなか思いつかない。私の所属学会では企業側に、博士課程に進んだ人をリスペクトして積極的に雇用してほしいと言ってきた。でも「日本の博士は使えない」と返ってくる。

いつクビになるか分からないなか、大学から雇われて死に物狂いで研究をやる欧米と、自分で学費を払って「お客様扱い」の日本とでは全然真剣度が違う、と。日本でも、ちゃんと成果を出している学生はいるんだけどね。

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