10年後の死亡率が最も低い睡眠時間は何時間か 日本人が知らない睡眠負債の恐怖
1日24時間という限られた時間の中で、やらなければいけないことが山積している。だから、睡眠時間を犠牲にするのはやむをえない。とかく日本人は、そう考えがちです。
もともと日本人の場合、睡眠時間を削って何かに励むことを「美徳」のように捉え、「寝る間も惜しんで」仕事や勉強をすることが必要だ、というメンタリティが根づいてしまっているのでしょう。しかし、それが逆に、体調をガタガタにするだけでなく、仕事の成果さえも台無しにしてしまっていたとしたら......。
こんなに危険な「睡眠負債」
「睡眠負債(sleep debt)」という表現を用いて、積み重なる睡眠不足に警鐘を鳴らしはじめたのは、アメリカ人のウィリアム・C・デメント教授です。
私も籍を置くスタンフォード大学睡眠生体リズム研究所の創設者で、90歳を超えられた今もご健在。今日の睡眠研究を牽引してこられた第一人者です。レム睡眠を発見したシカゴ大学のクライトマン研究チームのひとりでもあり、急速眼球運動のある睡眠のことを「レム睡眠」と呼びはじめたのも、デメント教授でした。
「ヒトは一定の睡眠時間を必要としており、それより睡眠時間が短ければ、足りない分がたまる。つまり眠りの借金が生じる」
これを「sleep debt」と呼び、「借金がたまると、脳や身体にさまざまな機能劣化が見られる。睡眠不足は危険である」と呼びかけたのです。1990年代のことです。
アメリカでも、日本と同じように「睡眠不足(sleep insufficiency)」という言葉は一般によく使われています。では、睡眠不足と睡眠負債はどう違うのか。いうなれば、「手持ちのお金が足りず、借りをつくるものの、すぐに返済できる状態」が「不足」、「借金に次ぐ借金で、借りがどんどんふくらみ、返すあてもなく、にっちもさっちもいかなくなる」のが「負債」。こう考えると違いがわかりやすいでしょう。
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