「みんな承認欲求をこじらせている。それを意識して選択しているか?」Tehuが語るネットと人生

2020年10月29日(木)16時25分
朴順梨(ライター)

<14歳で「早熟の天才」として注目され、18歳で「小4なりすまし」炎上、その後「あの人は今」的な状態だったTehuこと張惺。SNSでの「臨死体験」経験者である彼が、承認欲求との向き合い方を語った>

「十で神童十五で才子二十過ぎれば只の人」

子供の頃は並外れた才能の持ち主だったのに、大人になったら平凡な1人として埋没してしまうことを意味することわざは、とてもよく知られている。

本当に神童が凡人になるかどうかは分からない。が、Tehu(てふ)は誰もが認める早熟の天才だった。

本名は張惺(ちょう・さとる)。灘中学校の2年生だった2009年にiPhoneアプリ「健康計算機」を開発したのをきっかけに、さまざまな活動で注目を集め始めた彼は、大人たちから「次世代のリーダーの1人」と褒めたたえられていた。しかし同時にSNSで炎上を繰り返したことで、「もっとも有名な10代の嫌われ者」でもあった。

現在25歳になった彼は、果たして天才のままなのか。それとも、凡人になってしまったのか。それ以前に最近は、何をして、何を考えていたのか。

『「バズりたい」をやめてみた。』(CCCメディアハウス)を最近出版したTehuに、今までとこれからについて大いに語ってもらった。

10年間の学びをまとめた「承認欲求」という言葉

――本を書こうと思ったのは、何が理由ですか?

知り合いの編集者から「普段どんなサブスクをしてますか?」ってテーマの企画を提案されたんですけど、打ち合わせがてら雑談をしていて「承認欲求に向き合うって難しいよね」という話をしたら、「サブスクの話も面白いけど、承認欲求についての話も聞いてみたいたいよね」という流れになりまして。

それでなぜか、承認欲求についてたくさん話すことになったんです。最後にはサブスクにもちゃんとつながっているとは思うんですが。

それを読んだ別の編集者からオファーを頂いたのでまとめました。

僕は14歳で注目されるようになって、18歳で事件を起こして(※後述)、20歳ぐらいから実質的な隠居と言いますか、「あの人は今」的な状態になったんです。だから世の中的には「昔はチヤホヤされていたけれど、今は消えた人」みたいな扱いで、僕のことをバカにしている人もいるかもしれない。

でもこれまでの10年間を改めて振り返って、何をしてきたのかを見つめ直した経験が自分の中で学びになっているんです。その学びをまとめたのが「承認欲求」という言葉なんだと、この2年ぐらいずっと考えてきて。それで思考が整理されたタイミングでオファーが来たので、本にまとめようと思いました。

頭の中でずっと考えていたことなので、誰かと共有しようとは思っていなかった。でも僕みたいな稀有な経験をしていなくても、承認欲求は誰もが持っているものだと思うんです。

ただ、世の中の流れとしては承認欲求を刺激するコンテンツがどんどん増えているので、そこに向き合うことがとても難しくなっている。そんな中でどうやって個を喪失せずに生きられるか。

僕自身は喪失しかけてギリギリ戻ってきた「臨死体験」経験者なんですけど(笑)、それを伝えることで誰かのヒントになればと思ったのが、まとめたきっかけです。

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