ウォーキング・セラピーは「どこでもいい」「ただ歩けばいい」わけではない

2020年3月12日(木)15時25分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

<ストレスやうつ病を軽減する「ウォーキング・セラピー」。どのように準備するか、どこを歩くか、どのように歩くかを、その第一人者である臨床心理士のジョナサン・ホーバンが指南する>

2014年にイギリスで診療所「ウォーキング・セラピー・ロンドン」を開設した臨床心理士のジョナサン・ホーバンは、「ウォーキング・セラピー」の第一人者。

自然の中を歩くことで、ストレスや不安、さらには依存症、うつ病までも軽減されるという、欧米で注目を集める心理療法だ。

ここでは、ホーバンの著書『ウォーキング・セラピー ストレス・不安・うつ・悪習慣を自分で断ち切る』(井口景子・訳、CCCメディアハウス)から一部を抜粋し、3回にわたって掲載している。

最終回となる今回は、どのように準備するか、どこを歩くか、どのように歩くかといった、ウォーキング・セラピーの具体的なやり方について。なお、ホーバンによれば、スマートフォンなどの電子機器はできるだけ自宅に置いていくべきだという。

※抜粋第1回:欧米で注目を集める「歩くだけ」心理療法、ウォーキング・セラピーとは何か
※抜粋第2回:ウォーキングは、脳を活性化させ、ストレスを低下させ、つながりを感じさせる

◇ ◇ ◇

「狼の群れに入ったら、狼のように振る舞え」
ニキータ・フルシチョフ(ソビエト連邦最高指導者、1953〜64在任)

狼は観察眼の鋭い動物です。野生動物の常として、状況を的確に観察し、直感を駆使して正しい判断を下せなければ、命を落とします。

一方、現代社会に生きる私たちは、観察するよりもむしろ、観察されながら生きています。どれほど高い地位にあっても――あるいは、出世の階段を上れば上るほど――常に裁判にかけられているような感覚を覚えるかもしれません。まるでサーカスの動物のようにパフォーマンスの出来を評価され、私たちを評価する人もまた、もっと上の誰かに評価されています。

さらにプライベートでも不安に駆られ、自問自答が続きます。自分はいい親だろうか、いい夫・いい妻だろうか、私は何者なのだろう......。1章で見たように、こうした疑念や恐怖心、不安が心に雑音を生み出し、体にストレスを与えます。

そんなとき、人の視線を気にせずに真正面を向いて周囲を観察し、あらゆる方向から押し寄せる雑音をシャットアウトできれば、直感を解き放ち、本当の自分の声を聞けるようになります。

自然の世界は、穏やかで平和です。そうした環境に身を置き、とりとめもなく考えながら歩くうちに、有意義な思考が浮かび上がってきます。そうやってたどり着いた「本当の自分」は、他人の意見や態度に左右されることなく、独立した個人としてのあなたに必要な決断を下してくれるはずです。

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